「それしか答はない」日本の事例見る韓国石油化学…崖っぷちの自助策
韓国の石油化学産業が中国発の供給過剰で業績不振が長期化し容易に突破口を見いだせずにいる。業界でも構造調整が避けられないという共感が拡散する中で韓国政府が来月初めに出す石油化学産業競争力強化案に関心が集まる。 業界によると、韓国の石油化学産業は主要輸出市場だった中国の変心で収益性悪化に苦しめられている。中国の景気低迷で需要が振るわないだけでなく中国国内の自給率が上がり今後景気が回復しても状況が変わる兆しは見られない。韓国大手4社のうちロッテケミカルは7-9月期の営業損失が4136億ウォン(約455億円)に達した。LG化学石油化学部門は382億ウォン、ハンファソリューションケミカル部門は310億ウォンの営業損失を記録した。錦湖(クムホ)石油化学だけ唯一651億ウォンの黒字を出したが、前年同期比22.7%減少した。 韓国の石油化学業界は2020年以降中国の大規模ナフサ分解設備(NCC)増設で直撃弾を受けた。「産業のコメ」と呼ばれるエチレン生産能力は2020~2024年に世界で4500万トン増えたが、このうち中国が2500万トンで55.6%を占めた。ここに中東まで石油化学分野投資を拡大しており汎用製品の競争はさらに激しくなった。エチレン生産能力は中国と中東を中心に2026~2028年には約4000万トン増える見通しだ。韓国国内でもサウジアラビア国営石油企業アラムコと子会社であるエスオイルが「シャヒンプロジェクト」で2026年に蔚山(ウルサン)で年間エチレン180万トンを追加で生産する計画だ。 現在は工場を運営するほど損失が出る状況だ。収益性指標であるエチレンスプレッド(エチレン価格から原料であるナフサ価格を除いた金額)は2022年以降損益分岐点である1トン当たり300ドルを下回っており、今年7-9月期には186.47ドルにとどまった。韓国のNCC稼動率は2021年の93%から昨年は74%に下落した。 ◇韓国政府、事業再編に向けたインセンティブ議論 状況が悪化すると韓国政府は石油化学産業競争力強化に向けた案を準備中だ。汎用製品で付加価値が高いスペシャルティ中心の事業再編誘導と、このために税制・金融インセンティブを与えるというものだ。韓国企業はスペシャルティで事業多角化を推進しているがスピードは出ていない。2022年からスペシャルティ拡大にドライブをかけたロッテケミカルの場合、まだ汎用製品売り上げの割合が60%台と高い方だ。生産ラインを短期間に変えにくく、市場需要も縮小しているためだ。 韓国政府は企業間の買収合併が円滑に進むよう規制を緩和し、税制優遇を与える案を検討中であることがわかった。事業再編推進時に低利の政策金融提供、研究開発支援なども推進する見通しだ。業界関係者は「非主力事業を売却できるよう税制支援を強化してほしいと建議している。研究開発税制支援もスペシャルティ転換に役立つだろう」と話した。また別の業界関係者は「規模が大きいNCCの場合、韓国国内で買収者を見つけるのは難しい。政府が破格な支援策を出さない以上過去のような韓国企業同士の『ビッグディール』は厳しいだろう」と予想した。 ◇スペシャルティ強化したドイツと日本を参考に 韓国政府は日本と欧州の石油化学事業再編事例を参考にしている。韓国と同じように非産油国であるドイツと日本の石油化学企業は過去の汎用製品中心から電池、農化学、機能性素材などスペシャルティ中心に多角化するのに成功した。産業通商資源部関係者は「企業の自発的事業再編を促進するための案を準備中で関係官庁と協議している。日本と欧州の多様な事例を検討するだろう」と話した。 欧州では企業が買収合併を活性化して事業再編が進み、日本は政府主導の構造調整を進めた。石油化学世界1位のドイツBASFは積極的な買収合併により汎用製品の割合を2005年の42%から2022年には17%まで減らした。日本の主要石油化学企業は研究開発強化で汎用製品の割合を40%台に下げた。日本の石油化学業界はオイルショックの余波で1980年代初めから事業再編を進めたが、日本政府は公正取引法適用を一時的に猶予する方式で構造調整を支援した。産業通商資源部は過去の日本事例研究を発注した状態だ。 企業も自助策をまとめている。LG化学は3月にスチロフォームの原料スチレンモノマーを生産した麗水(ヨス)SM工場の稼動を中断した。ロッテケミカルは先月マレーシアの合成ゴム生産法人LUSRの清算を決めた。西江(ソガン)大学化学科のイ・ドクファン名誉教授は「スペシャルティへの転換は工場だけ作ればできるものではなく、大幅な研究開発投資と技術蓄積が必要。時間はかかるだろうが、韓国の石油化学産業はそれしか出口がない状況」と話した。