「“髪がない”はかわいそうじゃない」全身脱毛症の女性に聞いた“ヘアロスおしゃれ”と“異性の反応”
「髪がない」はかわいそうではない
ひきこもりから脱出し、社会復帰を果たした葉月さん。その陰には両親や友人など、周囲の理解と温かいサポートがあった。 「厳しい親を恨んだ時もありましたが、愛情をたくさん注いでもらったのも確か。それが私の心の強さの源にもなっていて。脱毛症になった時も両親は私を受け入れ、変に気を使わず、支えてくれたのでありがたかった。もし、“かわいそうな娘”として扱われていたら立ち直れなかったと思います」 両親は外出に困らないよう、ウィッグやメイクの面でもサポートしてくれた。 「母親に誘われて大手ウィッグ店へ行き、人毛と人工毛がミックスされた25万円のウィッグを購入。当時は情報も少なく、有名なウィッグ店しか知らないのもありましたが、こんなに高いのかと。また、父親が買ってきてくれたメイク本を見ながら眉を描く練習もしました。でも夕方になると眉が消えてしまったり、友達と写真を撮ってもメイクが不自然で嫌になったりと落ち込んでばかりでした。たまたまプロのメイクさんに教わる機会にも恵まれ、少しずつ上達していきました」 職場にも事前に知らせたほうが働きやすいと思い、面接時に脱毛症とウィッグのことを伝えた。 「普通に受け入れてくれて、嫌な思いもほとんどしたことがないので恵まれていると思います。一度だけ『あら、かわいそうね』と言われて心がチクッとしましたが……」 発症から2年たったころ、順天堂大学に脱毛外来があると知り、治療を再開。大量のステロイドを投与するステロイドパルス治療と、免疫を抑制するサドベ治療を提案されたが、顔がむくむステロイドの副作用を受け入れられず、サドベ治療を選択した。 「1年半治療を受けましたが、白髪が数本生えただけで効果はほとんどなくて。医師に発症から1年以内に治療を受けないと予後が悪いと聞き後悔しましたが、半数の人は治療を受けても良くならないと言う名医もいて、今となっては現状を受け入れてます」 2022年には広範囲の円形脱毛症に有効な飲み薬が初めて登場したが、葉月さんは服用していない。 「今の自分を発信することに満足していますし、薬価も高額で長期間飲み続けるのは、経済的にも負担になるので。髪のない自分を受け入れ、それを生かしたおしゃれができるようになったのも大きい。髪がない=かわいそうという世間のイメージを少しでも払拭できればと。ただ、勇気はすごくいりますが、後悔がないよう、脱毛症になったらすぐ専門外来へ行き、治療を受けてほしいと思います」