<解説>サンマの価格は異常に安いのか?高いのか?「初入荷」の値段が違う理由
2024年8月10日に漁が解禁されて、今年もサンマの季節が来ました。毎年のように大不漁が伝えられているサンマ漁。しかしながら、昨年のスタートに比べて、根室の花咲港では水揚げ量が469キロから67トンと140倍、価格はキロ当たり14万400円から626円と200分の1以下などと報道されています。 【図表】初競りと平均価格は大きく異なる その後も、厚岸でも初水揚げは昨年の約60倍で、価格は70分の1といった初水揚げでした。水揚げ量の増加で、札幌では1尾18円で販売した店があったという報道もあります。 一方で、豊洲市場の初競りでは、大きめの1尾140グラムのサイズに昨年のキロ20万円を2.5倍超えるキロ50万円の過去最高値が付いたということです。1尾換算では1尾7万円の計算になります。 水揚げ量が増えて1尾18円の店もあれば、1尾7万円で落札する卸しもある。これはどういうことなのでしょうか? 今年は異常に安いのでしょうか? 高いのでしょうか?また今年のサンマの供給や価格はどうなるのか? 報道を見てわけがわからない方は少なくないと思います。
クロマグロの初競り価格でわかるご祝儀相場
異常に高い価格も安い価格も、単に宣伝価格と考えればわかりやすいはずです。こういった異常な価格の魚は、全体の供給量からすれば無いと同様です。また採算が合わない価格のように見えても、数量が極端に少ないことや、広告費と考えれば非常に安いコストとなります。 ところがそれをよく解説せずに、物珍しい内容をそのまま伝えると、消費者に大きな誤解を生んでしまうのではないでしょうか。宣伝価格をもとに、その年の価格イメージができてしまうことは感心しません。
下の表をご覧ください。豊洲市場で生鮮クロマグロの価格を、初競り・1月と年間の平均価格をまとめたものです。 毎年1月の初競りの価格はびっくりするような価格となってニュースになります。2019年のキロ120万円という価格は、一尾で3億3000万円もの価格になりました。 ところが、1月や年間の平均価格と比較してみてください。キロ3000円から高くても5000円程度です。一方で、初競り価格は同8万円から120万円で10万円を超えることは珍しくありません。 また、極端に高いのはマスコミの注目が集まる1尾目だけです。こんな話をマグロ仲卸さんに聞いたことがあります。1尾目の異常価格のあとの2尾目のセリの話です。 「77」という価格が7万7000円か7700円かわからなくなり、結局やり直しで1万2000円になった。いかに宣伝効果がある1尾目の価値だけが高いことがわかります。1尾目はその10倍以上の価格です。 また、大西洋クロマグロの価値を試算する際に、豊洲の初競りの価格がベースになって計算されている報道を見たことがあります。筆者が買付をしていた頃に、「こんなに高い価格を払えるなら、もっと高く買えるはずだ!」などと言われたこともあります。1尾目が高いだけなのですが……(苦笑い)。