NTT東日本、IOWN×tsuzumiの活用による医療文書作成支援に向け、実証実験を開始
東日本電信電話株式会社(以下、NTT東日本)は9日、NTT東日本が運営する関東病院にて、ネットワーク技術「IOWN」と大規模言語モデル(LLM)「tsuzumi」を活用した医療文書作成支援AIモデルを用いて、業務効率化を図る実証実験を実施すると発表した。同社ではこれにより、持続可能な医療提供体制の維持に向けた「医師の働き方改革」における課題の解決を支援するとのこと。 この実証実験は、医師個人のさらなる負担増加が予想される中で、医師が健康に働き続けられる環境を整備し、持続可能な医療提供体制を維持していくことが目的。厚生労働省の調査によれば、所定外労働が発生する理由としては、「診断書やカルテ等の書類作成のため」が最も多いとのことで、医療文書作成を支援する生成AIを、さまざまなガイドラインに沿ってセキュアに利用できるように、環境を整備するとした。 具体的には、NTTの研究所が持つ自然言語処理研究の蓄積と、AI分野での研究力を生かすとともに、軽量かつ高い日本語処理性能を持つLLMの「tsuzumi」を活用し、専門性の高い医療用語に対しても適切な文脈で出力する、医療文書作成支援AIモデルの構築を目指すという。 また、膨大なエネルギー消費を伴うGPUサーバーをローカル環境に構築する場合、電力確保等のインフラ増強が課題となるが、関東病院と遠隔にある閉域データセンターのGPUサーバーをIOWN APNで接続させることで、機微な学習データを院内に置いたまま、ローカル環境と遜色(そんしょく)ない安全かつ低遅延のLLM学習環境の実現を図る。これにより、海外のLLMを使用することなく、国内かつ院内GPUサーバーを保持する必要がなくなるとのことで、安全に生成AIを活用できる、ガイドラインに準拠した環境整備を実現するとしている。 なお実証では、NECの伝送装置を活用してIOWN APNを構築するほか、セキュリティ面では、IOWN APN関連技術である、量子計算機でも攻撃が困難な「耐量子セキュアトランスポートシステム」を活用して、関東病院と遠隔にあるGPU間を接続する。 そして、IOWNを基盤としたLLM学習における拠点間通信の検証を行い、ローカル学習時間との比較するとのこと。一方で、tsuzumiを活用した医療文書作成支援AIモデルを構築し、プロンプトエンジニアリング、RAG、LoRAチューニング等によって医療情報を学習することで、tsuzumiの精度向上を図るとともに、医師による生成サマリーの評価を実施する。
クラウド Watch,石井 一志