動物の赤ちゃんをかわいいと感じ、求めてやまないのはなぜ? 進化や社会にもたらすものとは
cuteが「カワイイ」になるとき
スタイネス氏は、かわいさを感じたときに引き起こされる感情の全容を学術的に定義できないという問題は、言語の限界によるものかもしれないと考えている。 2019年3月1日付けで学術誌「Frontiers in Psychology」に掲載された論文の中で、氏は「かわいさによって誘発される感情反応はほとんど研究されていない。おそらく、この感情にあてはまる言葉が英語やノルウェー語、ドイツ語には存在しないからだろう」と述べている。 「かわいさは、カマ・ムタ(感動)、思いやり、優しさ、共感的関心、養育的愛情、カワイイ(kawaii)、あるいはキュートアグレッション(かわいいものを見ると攻撃したくなる衝動)を呼び起こすことがあります」とスタイネス氏は言う。 「カマ・ムタ」はサンスクリット語で、「愛で心を動かされる」という意味であり、互いに同族とみなす関係によって引き起こされる感情だと氏は説明する。 「カワイイ」とは日本発で大人気の概念であり、英語には単に「cute」と訳されることが多い。しかし、「カワイイ」は実際には単純さ、若々しい無邪気さ、小ささ、いとしさ、愛らしさという概念を含んでいる。 デール氏も、私たちの反応が養育行動を超えているという点でスタイネス氏に同意する。デール氏は、著書の中で「カワイイという感情は親和、つまり単なる養育を超えたより広い意味での社会的つながりを促す。だからこそ、何かをかわいいと感じると、私たちはそれを守りたいとか育てたいという特別な欲求がなくても、近づきたくなるのだ」と書いている。 かわいさ(cute)とはつかみどころのない美的感覚だ。言葉で定義するのは難しいが、見ればわかる。しかし、「カワイイ」は、かわいさを小ささや単純さと結び付けることにより、その本質を捉えているかもしれない。 動物に関していえば(本物の動物でもアニメキャラクターでも)、通常「かわいさ」を構成する要素は、全体的な小ささや、ベビースキーマの特徴を過度に強調した単純な外見だ(ピカチュウやミッキーマウスを思い浮かべてほしい)。