ホテル特化型とヘルスケア施設特化型J-REITの特徴と展望
今回はホテル特化型とヘルスケア特化型のJ-REITについて注目していきたいと思います。 ホテル特化型は訪日外国人旅行客の増加で稼働率が伸び、人気が高まっていいるリートです。一方、ヘルスケア特化型は2014年にできたばかりで、投資対象はサービス付き高齢者向け住宅、有料老人ホーム、病院などの医療施設になっています。 ホテル特化型は今後のインバウンド動向や2020年の東京五輪後の需要について、ヘルスケア特化型はこれから成長戦略などが気になります。それぞれの現状と展望について、ミリタス・フィナンシャル・コンサルティングの田渕直也さんが解説します。
ホテル特化型リートの特徴と展望
ホテル特化型J-REIT(以下、ホテルリート)は、近年脚光を浴びるJ-REITのタイプの一つです。その理由は、インバウンド、すなわち訪日外国人観光客の増加に伴う稼働率の上昇です。訪日観光客数は、近年大きく伸び、2015年度には過去最高の2135万人にまで達しています。当然のことながら、ホテルの宿泊需要もそれに応じて大きく伸びているわけです。 ホテルリートは、ホテル用不動産をホテルの運営会社(オペレーター)に賃貸して、賃料収入を得ています。賃料は固定賃料の割合が大きく、短期的にはホテルの稼働率にかかわらず、安定した収入を確保することが出来るようになっています。ただし、賃料の一部が稼働率に応じた変動賃料となっているケースも見られ、その部分については景気動向や訪日観光客数の増減に大きく影響を受けることになります。 現状、ホテルの稼働率は総じて高い水準にありますが、中国経済の落ち込みや円高の進行、熊本地震の影響などによって、訪日観光客数の伸びには、やや陰りが見える状況となっています。 また、訪日観光客数の増加や、2020年に開催される東京オリンピックを睨んで、新規ホテルの供給は増えており、競争が非常に激しくなっています。中長期的に見れば、オリンピック後にも訪日観光客の維持・拡大が実現できるかが大きな岐路になりそうです。 そうした中で、個々のホテルの収益性については、なんといっても交通アクセスのよさなどの立地と、オペレーターのホテル運営力が競争を勝ち抜くうえで重要なポイントになっていきます。 現在、ホテルリートには3銘柄が上場されています。規模が最大のジャパン・ホテル・リート投資法人(証券コード:8985)は、かつての日本ホテル・リート投資法人が、米金融大手ゴールドマンサックス系のジャパン・ホテル・アンド・リゾート投資法人と合併して誕生したものです。メインスポンサーはシンガポール系不動産ファンドのRECAPグループ、サブスポンサーに学生寮・社員寮やホテルの運営を手掛ける共立メンテナンスが入っています。 ちなみに、ホテルリートの利回りの平均は、J-REIT全体平均並みの3.37%ですが、NAV倍率はやや高めの1.55倍となっており、ホテルリート人気が高まった結果、若干割高な数値となっています。(5月31日現在)