ホテル特化型とヘルスケア施設特化型J-REITの特徴と展望
ヘルスケア施設特化型リートの特徴と展望
ヘルスケア施設特化型J-REIT(以下、ヘルスケアリート)は、2014年以降に上場が始まった新しいタイプのリートです。 投資対象は、サービス付き高齢者向け住宅、有料老人ホーム、病院などの医療施設ですが、病院への投資に関しては国交省によるガイドラインが別途定められるなど、投資へのハードルが高く、実質的には高齢者向け住宅と老人ホームがメインとなっています。 こうしたヘルスケア施設は、少子高齢化が進む中、社会的に機能の拡充が求められている重要な分野で、そうした施設の充実やサービスの向上などにヘルスケアリートが重要な役割を果たすことが大いに期待されています。 ヘルスケアリートは現在3銘柄あり、2014年11月に最初に上場した日本ヘルスケア投資法人(メインスポンサー:大和証券グループ、証券コード:3308)の他、2015年に上場したヘルスケア&メディカル投資法人(スポンサー:三井住友銀行など、証券コード:3455)、ジャパン・シニアリビング投資法人(スポンサー:ケネディクス、新生銀行など、証券コード:3460)があります。 ヘルスケアリートは、景気動向に左右されず、安定した収益構造を持つとされますが、その一方で、ヘルスケア施設特有の運営リスクがあるとされています。主なものは以下のとおりです ・介護保険などの制度変更に伴うリスク ・病院への投資にみられるように、医療業界からの反発などにより投資のハードルが高くなるリスク ・介護・医療関係の人手不足や低賃金が社会的にも大きな問題となっていますが、そうした問題がヘルスケア施設の運営に影響を及ぼすリスク ヘルスケアリートは上場してまだ日も浅く、資産規模も小さいということに加えて、こうした運営リスクの存在から、投資対象としての人気はあまり高まっていないのが実情です。ヘルスケアリートの平均分配金利回りは4.3%、NAV倍率は0.9倍と非常に割安な値になっているのは、そうした点を反映してのことだと考えられます。 つまり、ヘルスケアリートの社会的な意義に対する期待は非常に高いものがあるのですが、投資対象としての魅力を高め、多くの投資家を惹きつけるようになるためには、まだまだもう少し時間がかかるかもしれません。 (ミリタス・フィナンシャル・コンサルティング代表取締役・田渕直也) 著書に『入門 JーREITと不動産金融ビジネスのしくみ』、『入門 金融のしくみ』『世界一やさしい金融工学の本です』(すべて日本実業出版社)。