八失人員、夜騎大軍、上岸、単身狗、白菜価…「2024隠語ベストテン」に見るトホホな中国
中国には周知のように、日本のような「表現の自由」はないので、市民が本当に表現したいことは「隠語」となって密かに流行したりする。 【写真】衝撃! 中国ではなぜ、「配達ドライバー」が続々と死んでいるのか 前編【city不city、水霊霊的、班味、銀発力量…「2024流行語ベストテン」が解き明かした現代中国】に引き続き、後編では、2024年中国の「隠語ベストテン」をお届けしよう。選者は私である。それは、以下の言葉だ。 「報復社会」「八失人員」「歴史的垃圾時間」「夜騎大軍」「上岸」「地攤女友」「単身狗」「千金粧容」「白菜価」「献忠」 やはり、漢字を見ても「??」ではないだろうか。そこで「表版」と同様に、一語ずつ簡単に説明しよう。
1. 報復社会 (バオフシャーフイ)
6月10日に吉林省で、アメリカ人大学教員4人が刺されて負傷。同月24日、江蘇省蘇州市で日本人母子が襲われ負傷し、中国人女性が死亡。9月18日、広東省深圳市で日本人学校に通う10歳の日本人男児が刺されて死亡。同月30日、上海市のウォルマートで3人が刺殺され、15人が負傷。11月11日、広東省珠海市で暴走した車に轢(ひ)かれて35人が死亡、多数負傷……。 中国各地で、無差別殺傷事件が続発している。犯人の年齢も出身地も異なるが、多くに共通しているのが「社会に報復する」(報復社会)という動機である。こうしたことから、この言葉が密かに流行語となった。
2. 八失人員 (バーシーレニュエン)
上記の珠海市の大事件が発生した翌日、習近平主席が重要指示を出して、無差別殺傷事件の再発防止を命じた。この異例の厳命によって、全国の公安(警察)や居民委員会(住民組織)が、事件を起こしそうな人物の「洗い出し」を始めた。その時に広まったのが、「8つを失った人」(八失人員)という言葉だった。 「8つ」が何を指すかは諸説あるが、例えば次のような分類だ。「投資失敗人員」(投資に失敗して借金を背負った人)、「工作失業人員」(失業して収入を失った人)、「生活失意人員」(生活に挫折し、失意の人)、「情感失意人員」(心理的に失意にある人)、「関係失和人員」(家庭や職場で周囲と衝突している人)、「心態失衡人員」(各種の圧力で情緒不安定の人)、「精神失常人員」(精神疾患などにかかった人)、「年少失管人員」(保護者の管理が行き渡らない年少者)。 一部市民を勝手に「犯罪予備軍」に分類するなんてとも思うが、中国において最高指導者の指示は絶対である。