年収106万円の壁、どういうこと?越えたらどうなる? その先に「最も深刻な壁」も。手取りや将来の安心に直結の「壁」を説明
パートやアルバイトの人が直面する「年収の壁」の見直しに向け、与野党の議論が本格化している。国民民主党が手取りを増やす政策として「103万円の壁」の引き上げを掲げ、与党が合意した。「106万円の壁」については、厚生労働省が「撤廃」する方向で最終調整している。これには働く人から批判が相次ぐ。さらに「最も深刻な壁」もあると言う。どういうことなのだろうか。(共同通信=沢田和樹) 【写真】「高すぎる。何かの間違いでは…」 転勤で東京から引っ越したら、保育料が激増! 子育て施策で自治体は税収格差とどう闘うか
▽103万円の壁―越えると所得税が発生。学生アルバイトが意識 「年収の壁」は、一定の年収に達すると税金や社会保険料の負担が必要となる境目だ。境目を越えると手取りが減るため、そこまで年収が上がらないようにする「働き控え」が起き、人手不足の一因だと指摘されてきた。 「103万円の壁」では、年収103万円を超えた分に所得税がかかる。税率は5~45%と幅があり、収入が多いほど高い。例えば年収が105万円の人の場合、「壁」を越えた2万円に5%の税率をかけ、千円の所得税を支払うことになる。 この壁を特に意識していると言われるのは、アルバイトをする19~22歳の大学生らだ。壁を越えると自らに所得税がかかるだけでなく、親の「特定扶養親族」から外れることになる。つまり、親にとってもそれまで受けていた「特定扶養控除」(63万円)がなくなり、税負担の増加につながるからだ。 ▽106万円の壁―上回った途端、年15万円の社会保険料が引かれる
103万円が税制上の壁であるのに対し「106万円の壁」は社会保険に関わる。これを上回った途端に、年約15万円の社会保険料が給与から引かれる。会社員や公務員に扶養されているパート従業員の多くが収入を計算しながら働くのは、このためだ。扶養の範囲内であれば、本人に保険料負担はない。 これには、公的年金の一つである厚生年金の加入要件が関係している。現在、加入するための要件は以下の5つだ。 (1)従業員数51人以上の企業に勤務 (2)月収8万8千円以上(年収106万円以上) (3)週に20時間以上働く (4)2カ月を超えて働く見込み (5)学生ではない パート従業員などの短時間労働者は、これらを満たすと厚生年金と健康保険に入り、勤め先と折半で保険料を負担することになる。 厚生年金は、保険料の負担額に応じて老後の年金が増える。健康保険も本人が出産やけが、病気で休職した際に給与の3分の2相当が支給されるようになる。