年収106万円の壁、どういうこと?越えたらどうなる? その先に「最も深刻な壁」も。手取りや将来の安心に直結の「壁」を説明
議論になっている「106万円の壁の撤廃」は、このうち(2)を巡るものだ。これについて、詳しく説明したい。 ▽厚生年金の対象拡大へ、SNSでは批判相次ぐ 厚生労働省は、多くの人を厚生年金に加入させる「適用拡大」を進めている。根底には、勤務先の規模や働き方で加入する社会保険が異なり、老後の給付に差が出るのは不公平との考えがある。 例えば、同じパート従業員でも、独身だったり、世帯主が自営業者だったりする場合、配偶者の社会保険の扶養には入れない。厚生年金に入りたいと思っても、勤め先の従業員数が50人以下だと入れず、国民年金と国民健康保険の保険料を払うことになる。この人が厚生年金に加入できれば、保険料は企業と折半になり、老後の年金を上乗せできる。 加入者の拡大に向け、厚生労働省は従業員数の要件を撤廃する方針だ。また、最低賃金が上昇し、地域によっては週20時間以上働けば年収が106万円を超える人が増えているため、年収の要件もなくす方向で最終調整をしている。これが106万円の壁の「撤廃」に当たる。これにより企業に雇われて週20時間以上働く人は、年収や企業の規模に関係なく保険料を払うことになる。
厚生労働省は、7月に公表した公的年金の5年に1度の「健康診断」と言われる財政検証でも撤廃を想定した試算を行い、準備を進めてきた。厚生労働にとって、いわば既定路線だった。 しかし、共同通信など報道各社が11月に「106万円の壁の撤廃」を報じると、SNSは瞬く間に炎上した。「手取りを増やす政策と正反対」「老後よりも今の資金が必要だ」「年金が増えると言われても年金制度を信用できない」と批判が相次いだ。 厚生労働省は、対策として保険料負担を企業が肩代わりできる案を公表した。これにも「中小企業の負担が大きい」「できるのは大企業だけ」との指摘が上がっている。 ▽長生きするほど年金額は増加、厚生労働省HPでシミュレーションできる 厚生年金の保険料を払うことで将来の年金はどのくらい増えるのか。厚生労働省によると、年収150万円の場合、本人が払う厚生年金保険料は年13万9200円。10年加入すれば、計139万2千円になる。