観光庁「観光DX成果報告」を聞いてきた、ポイントはデータ活用や地域の合意形成
隠岐: 観光情報プラットフォームを強化、取得データを還元
隠岐OTA推進共同事業体の実証事業は「隠岐4島の予約DX・CRM統合による経済循環プロジェクト」。隠岐地域は、旅行者のニーズに合わせた高付加価値なサービスの提供、4島周遊の魅力を伝える情報発信、地域全体でのCRMの活用などで課題を抱えている。 この課題解決に向けて、情報発信・予約決済が可能なシームレスな地域サイトの構築と、取得データの分析・活用による再来訪促進と消費拡大の2つを方向性として示した。 観光情報プラットフォームの強化では、ウェブサイト「隠岐の島旅」を来島前のストレスや不安を軽減させる記事を作成したほか、宿泊、アクティビティなどの予約、企画乗船券の販売などをワンストップで行えるプラットフォームに刷新した。 また、各種予約や企画乗船券の販売からの旅行者情報を蓄積し、メールなどによる情報配信やリピート推奨を行うとともに、タビマエでの体験商品を訴求するクロスセルを実施。さらに、BIツールを活用して予約データを可視化し、地域内でのデータ活用を進めた。 そのうえで、実証事業のKGIをシステム利用者の観光消費額680万円と設定。KPIとしては、新たに構築するシステムでのCVR5%、顧客データベース/CRM基盤の整備については1回の滞在での平均訪島数2.2島を掲げた。 CVRに関しては、実証開始の11月こそ約0.5%だったものの、翌年1月には約7.4%まで向上。平均訪島数は2.0島となった。ただ、旅行者の平均リードタイム約50日が考慮できていなかったことを課題として挙げた。KGIの達成率は82.3%の559万円。 データ活用については、隠岐を認知してから、検索、予約、来島までの実態が把握できるようになり、そのデータを事業者に還元することで、地域一体的な施策立案が可能になったと総括した。
日本観光振興協会: 全国観光DMPを用いたデータでOODAループを
日本観光振興デジタルプラットフォーム推進コンソーシアムは、「日本観光振興デジタルプラットフォーム」構築事業について報告した。 この事業では、「日本観光振興デジタルプラットフォーム」と地域がデータを効率的に整理する「観光情報データ」と「観光マーケティングデータ」を観光事業者が活用し、施策立案やマーケティング施策に用いることで、自発的にOODA(観察・情勢判断・意思決定・行動)ループを回すことを目指す。 方向性として、全国観光DMPを用いたマーケティングデータの基礎整備と可視化およびデータ戦略・先進モデル地域の構築を掲げている。 実証では、地域が共通で利用できる「全国観光DMP」と、そのデータの可視化・分析するBI機能を持つ「高度化地域DMP・基本機能」を構築し、具体的なデータ活用を支援する。全国観光DMPでは、地域の観光概況、地域の観光分析、地域の魅力分析、他地域との比較の4つのダッシュボード機能を整備。通常業務での継続利用を目指す。 取り組みレベルを無関心地域、活用意欲地域、積極的活用地域に分け、それぞれに活用プログラムを提案、効率的な業務支援を行い、OODAを回していく。 OODAのうち、Observe (観察)でデータの把握、Orient(情勢判断)でデータ分析と活用を行い、現状分析・課題・方向性をまとめたうえで施策の仮説を作成。それを元に最適なプランを選択するDecide(意思決定)、そして意思決定した内容を実行に移すAct(行動)を行う。 今後、全国観光DMPを元に、DMOが地域独自のダッシュボードを構築し、データ深度化による戦略・効果分析を行い、地域の伴奏支援やシステム開発を行う。 そのうえで、実証地域として群馬県、埼玉県、千葉県、長崎県の例を紹介した。それぞれ、基本機能を活用したOODAループを実施し、観光振興計画を策定。今後は、独自のDMPを構築し、事業者のコンテンツやサービス開発への伴奏支援、データ分析に基づくターゲティング広告配信などを行っていくという。 最終的には、「全国観光DMP」にデータを蓄積し、BI機能を持つ「高度化地域DMP」で可視化。データを関係者間で共有・分析し、戦略に活用することで、観光地経営の高度化、観光産業の生産性向上、観光地域づくりへの住民参加、旅行者の利便性向上を実現していく。
トラベルボイス編集部