世界中で大ヒット「ゲルカヤノ」の生みの親・アシックス榧野さんってどんな人?
オニツカ時代から選手ファーストで機能とテクノロジーを大事にしてきた歴史をリスペクトしつつ、そこに情緒を加味するのが僕の役目でした。今、アシックスの(1990~2000、10年代のスポーツシューズをファッションスニーカーに刷新した)「スポーツスタイル」が売れていますが、そういった情緒が若い世代にとっては新鮮なのかもしれません。
WWD:確かに街中でアシックスのスニーカーを履く若者を多く見かけるようになりました。少し前までファッションスニーカーは「ナイキ」「アディダス」「ニューバランス」など欧米一辺倒で、「アシックス」は部活動のイメージが強いためか…
榧野:ダサいと言われてきました。辛かったなぁ。ファッションはつかみどころがない。会社からも小売店からも「ファッション性の高いものを作れ」と言われ続けてきましたが、具体的にファッション性の高いシューズの答えは誰も持っていません。僕が得意な情緒的なデザインがファッション性に結びついているのかは分かりません。でも醸し出されるデザインのバックストーリーを感じ取ってくれているような気がします。僕のシューズは「ガンダムチックなデザイン」「メカっぽい」と言われたりしましたが、時代が進んで評価されるのだから面白いですね。
“ゲルカヤノ14"の大ヒットはうれしいけど、悔しい
WWD:“ゲルカヤノ14”がファッションスニーカーとして世界中で大ヒットしています。
榧野:カッコいいよね。きょう僕が履いているのも“ゲルカヤノ14"。これは韓国の「アンダーマイカー」とコラボしたスニーカーです。でも残念ながら僕は2008年発売の“14”のオリジナルに携わっていません。僕は担当したのは初代から“13"までなんです。だから“14”が大ブレイクして悔しいですよ(笑)。
“14"のデザイナーは、僕の大学の後輩の山下秀則(現・アパレルエクィップメント統括部デザイン部部長)です。山下は“13”までのデザイン哲学を踏襲し、さらに昇華させてくれました。本当に素晴らしいし、世界中で売れるのも納得です。うれしい。けれど、悔しい。複雑な気持ちです。