寄り添えるか、優しくできるか――綾野剛と常田大希が語るクリエイティブの「原点」
綾野「アスリートと呼ばれる人たちに大きい影響を受けながら、同時進行で音楽にも入っていって。当時って、BRAHMANとかハイスタ(Hi-STANDARD)とかがはやってて、海外のものだとオフスプリング、NOFX、グリーン・デイの3強みたいな感じだったとき、なぜか俺は、ニルヴァーナとかマンソン(マリリン・マンソン)とかに行ってた。日本のアーティストだと、もうhide with Spread Beaver。何か軍隊みたいな集団力がすごく魅力的でまぶしかった。PVを見るために、わざわざカラオケに行って。親の前では見れないR18みたいな感覚で、なんか初めて性を知っていくみたいにドキドキした感じがあった」
しっかり立っていれば、同じような感覚のやつが集まってくる
「一番の挫折」という質問に対する答えからは、常田がクリエイティブチーム・PERIMETRONとしても活動しはじめた動機がうかがえた。PERIMETRONはKing GnuのMVの制作も手がけている。 常田「俺、なんか順風満帆にやってきたみたいな感じに思われるけど、全くそうではない」 綾野「挫折は隣人として存在してることによって、いい意味の臆病さを持てたりするし、俺にとってはわりとポジティブなワードだね。ただ、セリフが出てこなくなったことがある。『ありがとう』っていうセリフすら。2カ月間くらい続いたね」 常田「その状況、どう抜けられたの?」 綾野「何か大きなきっかけがあったっていうよりかは、自分じゃない誰かをちゃんと信じたっていうことかもしれない。現場の人たちは家族みたいなもんだし、総合芸術だから自分ひとりで闘ってるわけではない。左右を見れば、同じところでみんなが前に向かい、刀を構えてるような状態で一緒に闘ってくれてるじゃないか、と。そっからかな」 常田「俺は、最初は全部自分でやってたから、人と一緒にやることに挫折と似たような経験はあるね。MV作るときに、出来上がりに全然納得できなくて、『こうしたほうがいい』みたいなこと言ったら、ディレクターに『なんで映像畑じゃないやつに言われなきゃいけねえんだ』みたいなこと言われて。若い頃、その類いの揉め事は日常茶飯事だった。一緒に作品を作るってことが、こんなに大変なことなんだ、って。自分でできることは自分でやるってことに戻るきっかけになったかな。でも、そこにひとりでしっかり立ってれば、同じような感覚を持ったやつがちゃんと集まってきて、いいほうに転びだしたな、その時期くらいから」