寄り添えるか、優しくできるか――綾野剛と常田大希が語るクリエイティブの「原点」
綾野から見た常田は「包み込む変態」
綾野は、常田に対する世間のイメージとふだんの本人にはギャップがあると言う。 綾野「大希ってかわいいよ」 常田「なにそれ?(笑)」 綾野「すごいきゃわ。そういうギャップは会ったときから思ってた」 常田「すごいつんけんしたやつに思われるからね」 綾野「お互いにね。友人から始まってるから、一緒にクリエイションしたことなかったけど、『ヤクザと家族』を今一緒にやってるなかで……やっぱ変態だよね」 常田「いい声だね。今、(綾野の声を録音して)サンプリングしたい声だった、『変態だよね』(笑)」 綾野「人を傷つけない変態っていうか、包み込む変態だよね」 「最上級の褒め言葉かもしれない」と常田が笑う。綾野と常田のお互いへのリスペクトが顔をのぞかせる。2021年公開の映画『ヤクザと家族 The Family』では綾野が主演し、常田のmillennium paradeが主題歌「FAMILIA」を担当。その制作過程での常田を、綾野は「まぶしかった」と振り返る。 綾野「それこそスイッチが入ってるときは、電話した瞬間、わかる。機嫌がさまよっている。いろんなものをまとっていて渋滞してる感じ。そこも含めてきゃわだよね」 常田「俺も(綾野は)やっぱきゃわだなと思うよ。仕事とのスイッチのギャップはすごいあるから。自分のドラマを『これ絶対見ろよ』って送ってくるあたりも、ちょっとやばいじゃん。『やばきゃわ』だよね(笑)」
不急だけれど、不要ではない
綾野は以前、テレビで「自分を殺している」と語ったことがある。自分の出演しているドラマを見てほしいと常田に言うのは、実はそんな綾野が変化してきたからだという。『ヤクザと家族 The Family』でも、綾野が演じる山本賢治は、役と綾野自身のハイブリッドになってきているという。 綾野「そもそも役者だから、作品で全部語ってるので、自分の人生を。だから綾野剛っていうものを表現する必要があるんだろうか、みたいな乖離が起きる。自分を殺して役に投下するようなことをずっと続けてきたけど、もっと役と綾野剛のハイブリッドでいいのかなと。山本と自分がちゃんとリンクできる部分があるんだったら、自分の景色も混ぜて、山本をより魅力的にしていく。もう少し自分のこと愛せよって話なんだと思うんだけど、放棄に近い達観みたいなものがずっとあったから。役は自分への放棄を払拭してくれる人物だし、ある種、理想郷に近いというか、サンクチュアリだったりするんだよね。だから、そのサンクチュアリに綾野剛が入る権利はないという感覚がずっとあった。でも、大希はこんな俺を理解してくれる。そういうふうに愛してくれてる人たちの綾野剛を、もっと役と同化させていいんだと思えた、素直に。『MIU404』って作品を大希に見てほしいと言ったのは、ドラマではそれが一発目だったから、その過程を、見てもらいたかったんだ」