世界で愛されるクリスマスクッキー、推しのお店からクリスマスに欠かせなくなった歴史まで
ジンジャーブレッドから型抜きクッキーまで、伝統はどのように始まり広まったのか
クッキー(またはビスケット)は、特に祝祭の時期に世界中で愛されるお菓子で、多くの文化圏にそれぞれの特別なレシピが存在する。みんなで集い、ごちそうを食べる古代の冬至の祭りの伝統に、中世にクリスマスが合わさり、ヨーロッパにおける祝祭のクッキーの歴史が本格的に始まった。 ギャラリー:クリスマスクッキー、推しのお店から歴史まで 写真4点 現代のクリスマスクッキーにはさまざまなバリエーションがある。クリスマスマーケットでジンジャーブレッドを売る露店を見て歩くにしても、自家製のステンドグラスクッキーをツリーに飾るにしても(ジンジャーブレッドで作られたものを飾るのは、ドイツが起源の習慣だ)、サンタのために砂糖をまぶした何かしらを置いておくにしても、祝祭のクッキーは世界中でクリスマスに欠かせないものなのだ。
当初はナッツから作られていたクッキー
米国の有名シェフ、ニック・ディジョバンニ氏によれば、クッキーの由来は、サトウキビが広まりはじめた7世紀のペルシャまでさかのぼる。「砂糖が手に入りやすくなるにつれ、クッキーは贅沢品から一般的なものになりました。いまではみんなが知っていて、みんなが大好きな食べ物です」 もともとはナッツから作られていたため、当時のクッキーは現代のものと比べてとても硬く、乾いていた。 「クッキーはもともとの姿から味も見た目もかなり変化してきました」とディジョバンニ氏は言う。クッキーがヨーロッパに入ってきたのは、8世紀初頭、スペインがイスラム勢力に征服されたころだ。 それから香辛料貿易を通じ、レシピが形作られていった。1300年代には、甘く、やわらかく、スパイシーな現代のレシピに似通ってきつつあった。 「どれだけ地味なクリスマスクッキーであろうと、その背景には世界規模の物語があります」。『クリスマスの焼き菓子の知られざる歴史(原題:The Secret History of Christmas Baking)』を著したリンダ・レディッシュ氏はこう話す。「ひとつの祝日だけに関係しているわけではないのです」 世界中のいたるところで人々は何千年と、冬至の祝祭を通じて、変わりゆく時節を祝ってきた。そこで常に重要だったのは、身近な人とごちそうを楽しむことだった。 中世には、ヨーロッパにおける冬至の祝祭は、当時発展しつつあったクリスマスの祝祭と混ざりはじめていた。そしてヨーロッパ中に広まっていったクッキーは、特にこの時期の人気メニューとなった。一度にたくさん作れ、長持ちし、分けやすかったからだ。 すべてのクリスマスクッキーのルーツとしてよく挙げられるのが、ジンジャーブレッドだ。ドライフルーツ、砂糖、そしてシナモンやクローブ、ナツメグ、ショウガなどのスパイスが、ヨーロッパ中の町に登場しだすのに合わせて発展したクッキーだ。 主な誕生の地として考えられているのが、ふたつの主要な交易路が通っていたドイツのニュルンベルクだ。 13世紀の時点でニュルンベルクでは、やわらかくもちっとしてスパイスの入った、レープクーヘン(ジンジャーブレッド)がベーキング職人によって焼かれていた。元になったのはスパイスの入った蜂蜜菓子で、ユダヤ人の貿易商がアラブ世界から持ち込んだアーモンドやオレンジ、砂糖といった材料が使われていた。 スパイスやアーモンドは高価だったため、クリスマスのような特別な場面のために取っておかれたが、それでもクリスマスクッキーの発展は続いた。 ほかに人気のあるクリスマスクッキーと言えば、粉糖がかかってナッツとバターがたっぷりの、スウェーデンの三日月型クッキー、ロシアのティーケーキ、イタリアとメキシコでいうウエディングクッキーだ。こうした口の中で溶ける雪玉のようなスノーボールクッキーにはさまざまな形があり、はっきりした由来はまだわかっていない。 ジンジャーブレッドと同じように、このクッキーも数多くの文化圏を通じて少しずつ発展し、その過程で地域ごとの名前とバリエーションができあがっていった。「世界中の人々がシンプルなクッキーに新たな工夫を凝らしてきました。それはそれぞれの文化を見る上でとても楽しい視点です」とディジョバンニ氏は話す。 1600年代に入ると、ベーキング職人はクッキーの表面に砂糖と卵白を混ぜたものをかけるようになった。これは乾くと氷のような見た目になるため、アイシングと呼ばれている。 20世紀初頭には、北米で型抜きクッキーが人気となった。ドイツからの輸入に関する法律が変わり、手に入りやすくなったからだ。そしてロイヤルアイシング(卵白と粉糖からなる、固くて滑らかなアイシング)の発明とともに、1900年代を通じてヨーロッパや北米のベーカリーでは、入り組んだ装飾のなされたクッキーが現れはじめ、クリスマスクッキーの見た目の可能性をさらに押し広げていった。