発達障害と診断された日、妻は「ゴメン」と言った 危機を乗り越えた夫婦が、漫画で描くリアルな日常 作品で伝えたい「感謝」とは
「(妻は)確かに変だ。でも僕だって…」。発達障害がある妻とその夫の日常を描いた漫画「僕の妻は発達障害」が月刊コミックバンチ(新潮社)で好評連載中だ。作者はナナトエリさん(43)と亀山聡さん(41)夫妻。ナナトさん自身も発達障害の当事者で、自分たちの実体験や当事者仲間の声を基にしたリアルな内容になっている。時にすれ違い、ぶつかりながら、2人が紡ぐストーリーからは、障害とは何かを考えるヒントが見えてくる。(共同通信=永澤陽生) 「発達障害ビジネスだ」専門医が批判、学会も認めない療法を勧めるクリニックの実態 患者の頭に「磁気刺激」、治療代に高額ローン組ますケースも
▽「パワフルでエネルギッシュな人」と結婚したら…明け方までけんかが絶えず ナナトさんは結婚前に北海道から上京し、広告の漫画やアシスタントの仕事をいくつも掛け持ちしていた。今にして思えば「衝動性が強く、自分の限界が分からないまま働き過ぎだった」と言う。同じ漫画家志望の亀山さんの目には「すごいパワフルで、エネルギッシュな人」と映った。 しかし、いざ結婚生活を始めてみると、「あれ?」と思うことがしばしばあった。亀山さんが真剣な話をしても、ナナトさんは他のことに注意が向いて全然覚えていなかったり、物事の考え方が大きく違ったり。結婚してから1年がたっても、明け方までけんかが絶えず、亀山さんは「毎日が戦争のような状態だった」と話す。ささいなきっかけで衝突することが多かったため、ナナトさんは半信半疑だったが、30代半ばで検査を受けることにした。 結果はLINE(ライン)で知らせた。 〈発達障害だった。ゴメン〉
障害者と結婚させてしまったという申し訳なさと、これから迷惑をかけるかもしれないという気持ちから出た言葉だった。亀山さんからは即座に励ますような笑顔のスタンプが返ってきた。 ▽ひきこもりにゲーム依存、夫婦の窮地を救った精神科医のアドバイス しかし、その日を境にナナトさんは自宅にひきこもるようになった。「私には何かできることがあるのかな」と思考が後ろ向きになり、亀山さんを「自分より何でもできるすごい人」と仰ぎ見るようになった。「彼を起こしてしまうのでは」と、びくびくして寝返りさえ打てなくなり、追い詰められて自ら命を絶とうとしたこともあった。 亀山さんも「それまでは平等に理屈で闘っていたのに、心のどこかでこっちの感覚の方が普通で正しいと思い始めていた」と振り返る。一方で漫画の仕事はうまくいっておらず、オンラインゲームにのめり込んで、ゲーム内でアイテムを手に入れるための「ガチャ」と呼ばれる“くじ”に半年間で200万円をつぎ込んだ。事故で亡くなった父親の遺産にまで手を付けてしまった。