発達障害と診断された日、妻は「ゴメン」と言った 危機を乗り越えた夫婦が、漫画で描くリアルな日常 作品で伝えたい「感謝」とは
2人の窮地を救ったのは「夫婦のバランスが崩れているよ」という精神科医のアドバイスだった。「お互いを知るためには、まずはそれぞれが自分の弱さと向き合わないといけない。そのきっかけを障害や依存症からもらったという感じ」(ナナトさん)。第三者が間に入ることで、頑なだった心を少しずつ和らげることができたという。 ▽ラブストーリーではなく、夫婦のありのままの姿を 危機を乗り越えた2人は発達障害をテーマにした漫画を描きたいと月刊コミックバンチの編集長榎谷純一さんに相談した。当初は、大学生が登場する「めぞん一刻」のようなラブストーリーを念頭に置いていたが、榎谷さんからは夫婦のありのままの姿を描いてはどうかと提案された。榎谷さんは「発達障害がある妻と定型発達の夫という関係性が興味深かった。そんな夫婦の生活や感情を読んでみたいと思った」と振り返る。作品化に当たっては「暗い内容にせず、決して自分を卑下しないように」との注文を付けた。
「僕の妻は―」は2020年に連載スタート。発達障害があるアパレル店員の知花と、夫で漫画家アシスタントの悟の日常を描く。 知花は明るく快活で売り上げ成績も良いが、同時に二つの作業をこなすのが苦手。売り場で洋服をたたんでいる最中に客から声をかけられると、途中で放り出し、周りの店員に迷惑をかけてしまう。 家でも思ったことを一方的にしゃべり続けたり、家事を順番通りにこなさないと混乱したりして、悟は途方に暮れる。 そんな中、2人は対話を重ねながら、さまざまな工夫をこらす。悟が漫画に集中したい時に発動する「邪魔しないアラート」も、その一つ。知花が分かりやすいよう部屋に張り紙をし、その期間のやりとりはLINEで済ませる。 ▽「僕はぐずぐずと考え過ぎてしまうが、妻はすぱっと決断できる」 物語はフィクションで、日常生活での出来事やナナトさん自身のアパレル経験、交流サイト(SNS)で知り合った当事者らの話を基に、発達障害にまつわる多様なテーマを取り上げている。