シャインマスカットまた未開花症 つぼみ形状「筋なし」多数
ブドウ「シャインマスカット」で問題となっている開花異常(未開花症)を巡り、近畿の農家から「今年もかなりの規模で発生しそう」との情報が本紙「農家の特報班」に寄せられた。まだ開花期ではないが、既につぼみに異常が出ており、未開花症の兆候ではないかとみる。確認のため、記者は現場の樹園地に急行した。 未開花症が出ていないか一つずつ花穂を確認する農家 「つぼみが膨らんでつるっとしている。通常だと、こうはならない」。連絡をくれた40代男性農家は木から垂れた花穂を指差し、そう説明してくれた。 ただ、取材時のつぼみは2、3ミリと非常に小さい。目を凝らしたが、記者の目にはよく分からなかった。農家が切り落とした花穂を手に取り、間近で観察すると、ようやく形状の違いが分かった。 正常なつぼみは軸から先端にかけて複数の筋が入り細長い形状。一方、農家が「異常なつぼみ」とする方は、そうした筋がなく、より丸みを帯びていた。
「ほとんどの木で異常」出口の見えない現状
つぼみから未開花症の兆候が見られることは、農研機構が2月に開いた果樹茶業研究会でも報告されていた。 現場での取材後、記者は農家の許可を得た上で、現場で撮影した一部写真を同機構に提供。複数の専門家に確認してもらったところ、農家の見立て通り「(筋がないつぼみは)未開花症に見える」との回答を得た。 記者が訪れた樹園地には、シャインの成木が40本並んでいたが、この農家は「ほとんどの木でつぼみに異常が出ている」と話す。初めて発生した2022年から広範囲での発生が続いている。出口の見えない現状に、別の緑系ブドウへの植え替えも頭によぎっている。
管理に徒労感「栽培方法が悪いのか」
取材した農家は未開花症の兆候を確認しても、管理を続けている。症状の重い房は全て切り落としたいが、そうすると樹勢を強めてしまい翌年の栽培に支障が出るため、症状が重い木もある程度は房を残しているという。 房の形を整える「花穂整形」で症状が出にくい部位を残すなど、できる限りの対応策も取っているが、花穂全体に症状が及んでいると販売できる品質の房を作るのは難しい。「品質の低い房しかできないと分かっているのに、管理を続けるのは徒労感がある」と打ち明ける。 「栽培方法が悪いのか」と自らを責めてしまい、「夜も眠れないことがある」という。 具体的に農業経営にどのような打撃が出ているのか。このまま事態が改善しなければ客が離れ、経営の根幹が揺らぐ恐れがある実態が見えてきた。