メグロからカワサキへ、Wシリーズを現代に繋ぐW800
FI化で排出ガスの規制に対応し、三度舞い戻った「W」は800cc
2010年海外輸出モデルとしてW800が発表され、2011年より国内にも導入されWシリーズは復活を遂げる。W800はW650のエンジンをベースにボアを72.0mmから77.0mmに拡大して排気量を773ccにアップ、燃料供給装置はキャブレターからフューエルインジェクションへと改められた。このフューエルインジェクション化は排気ガス規制に対応するための選択であるが、W800は燃料ポンプをタンクの外に配置することでタンクのデザインや容量を犠牲にすることなく、サブスロットルを採用する事で自然なスロットルフィールを生み出している。スペックにおいては最高出力は48PS/6,500rpmとW650と同じだが、最大トルクは6.3kg-m/2,500rpmという低回転域から大きなトルクを発生するように仕立てられていた。低速域から発生される豊かなトルクと、エンジンの爆発を感じるロングストロークの大排気量バーチカルツインエンジン、リラックスしたライディングポジョン。このようにW800は各所に余裕を感じさせるバイクであり、スピードだけではない大排気量バイクの楽しみ方を多くのライダーに選択させた。
Wからメグロへ、伝統は引き継がれていく
2016年W800は再び排出ガスの規制強化によって生産中止となり、Wシリーズは三度カワサキのラインナップから消えることとなる。しかし、2019年「W800ストリート」と「W800カフェ」という2つのモデルが発表され、Wシリーズは復活を遂げる。さらにその年の東京モーターショーでスタンダードな「W800」も発表され、この3種類のWは現在も販売が継続されている。この新しいW800はエンジンは基本キャリーオーバーだが、スペックは最高出力52PS/6,500rpm、最大トルク6.3kg-m/4,800rpmへと改められた。車体はフレームを新設計し、ストリートとカフェはフロントに18インチのホイールが与えられている。また、リアブレーキがディスク化されてABSも装備、ライトもLED化されるなど各部がアップグレードされている。さらにメグロK1の登場から60年目に当たる2020年、W800をベースにした「メグロ」の名前を冠した新型車が発表された。「メグロK3」と名付けられたそのバイクは、K2をイメージさせるメッキタンクやカタカナのメグロロゴ、ブラックアウトされたフェンダーなどを採用しオールドファンの心を掴んだ。このメグロを含むW800シリーズは、今後もカワサキのスタンダードバイクとして永く走り続けることだろう。
W800主要諸元(2012)
・全長×全幅×全高:2180×790×1075mm ・ホイールベース:1465mm ・シート高:790mm ・車重:216kg ・エジンン:空冷4ストローク並列2筒SOHC4バルブ 773cc ・最高出力:48PS/6500rpm ・最大トルク:6.3㎏m/2500rpm ・燃料タンク容量:14L ・変速機:5段リターン ・ブレーキ:F=ディスク、R=ドラム ・タイヤ:F=100/90-19、R=130/80-18 ・価格:80万9524円(税抜当時価格)
後藤秀之