メグロからカワサキへ、Wシリーズを現代に繋ぐW800
復活した「W」は、テイストを楽しむ大人のバイク
カワサキの歴史に再びWの名称が現れたのは、1998年のことであった。その年の12月に発表されたW650は、翌1999年に発売されることになる。このW650はSRブームに端を発するネオクラシックカテゴリーに投入されたモデルで、1950~1960年代の英国車や初期のWシリーズを彷彿させるデザインを纏っていた。 エンジンは完全新設計の空冷SOHC4バルブ675ccのバーチカルツインで、ボア×ストロークは初期Wシリーズが74.0×72.6mmというショートストロークだったのに対して、72.0×83.0mmというログストロークに設定されていた。このエンジン最大の特徴とも言えるのがハイポイドべべルギアを使用したカムシャフトの駆動方式で、エンジンの左側にあるクランクケースとシリンダーヘッドをつなぐべべルギアシャフトが存在感を示していた。 高性能を狙っていた初期Wシリーズと異なり、新しいW650はいわゆるテイストを楽しむのがメインのバイク。旧Wシリーズに倣った360°クランクを採用し、最高出力48PS/6,500rpm、最大トルク5.5kg-m/5,000rpmとこの時代としては控えめであったが、このスペックは最高出力47PS/6,500rpm、最大トルク5.4kg-m/5,500rpmであったW1とほぼ同じであった。完成度の高いクラシックスタイルや、セルフスターターとキックスターターの両方を装備するといったこだわりの装備を持つW650は一定の成功を収め、2006年には普通自動二輪車版となるW400が発売されている。このW400はカワサキには珍しくストロークのみを短くすることで排気量を399ccに落としており、ボア×ストローク72.0×49.0mmというかなりのショートストローク設定となっており、スペックは最高出力29PS/7,500rpm、最大トルク3.0kg-m/6,000rpmとされた。しかし、W650/400は2008年の排出ガスの規制強化によって生産中止となり、Wシリーズは再びカワサキのラインナップから姿を消すこことなった。