半グレの恐喝、薬物や賄賂。裏社会の取材で学んだ“生きるヒント”とは
閉塞感の漂う現代で仕事やお金のことなど、将来の不安や悩みは尽きないものだ。“表社会”で答えが見つからないならば、“裏社会”ではどうか――。 『ヒットを生む技術 小規模出版社の編集者が“大当たり”を連発できる理由』(鉄人社)が話題の草下シンヤさん(46歳)は、この出版不況の中で、社員数15人以下の小規模出版社ながら累計発行部数として2000万部以上の書籍を手掛けた敏腕編集者・作家である。それも裏社会のことなど、他の編集者では手が出せないようなヤバい本ばかりなのだ。 今回は、草下さんが裏社会の取材を通じて得た気づきから“表社会を生きるヒント”を紹介する。(記事は全2回の2回目)
「担任の先生が人を殺して逮捕された」普通の少年時代から一転
小学校低学年までの草下さんは「地元は田舎なので、一輪車をこいだり、山を走りまわってアケビを取って食べたり、楽しく遊んでいた」という。 いたって“普通”の少年時代を過ごしていたはずが、なぜ裏社会に興味を持つようになったのか。 「小学4年生のとき、先生が殺人を犯して捕まりました。いちばんやってはいけないことを、聖職者である先生がやってしまったわけです。大人に対する不信感が強くなり、常識を疑ってかかるようになりました。『何でも見てやろう』というか、社会全体の構造を、自分の目で確かめたくなったんです」 構造を知るべく、生徒会、応援団、非行少年グループ……と、様々なコミュニティで活躍したそうだ。その後、上京して出版業界で働くことになった草下さん。次に「何でも見てやろう」と選んだ先は、裏社会だった。
不安への対処法「分からないことを考えて疲れちゃうのがいちばんよくない」
裏社会の取材は「相手が映像を残されることを嫌うので、基本的に対面」だという。素朴な疑問として、社会の裏側にいる得体の知れない人と直接会うことは怖くないのだろうか。 「昔は怖かったですが、今は怖くないです。『話を聞いて欲しい』という人間に、話を聞きに行くわけですから。 でも、脅されることはありましたよ。『今、お前の家の近くから見ているぞ』とか、『親しい人が事故に遭わないといいな』と不安にさせるようなことを遠回しに言ってくるなんてよくあることですね。 トラブルが起きて呼び出されても、逃げません。編集長という責任ある立場で、頼れる上司もいない。自分がやるしかなかったんです」 しかし、過去にはヒヤッとすることもあったのだとか……。 「『お前をさらう計画があったけど、流れたから安心しろよ』と言われました。あのときはさすがに『嫌だなぁ』と思いましたね。あと、半グレ関係の内容の件で、片腕を失うぐらいの覚悟をして会いに行ったこともあります」 そんな出来事が続けば、悪い未来が頭をよぎって、気が気ではなくなってしまいそう。不安に対処するコツは「本当にやられるときは、何も言わずに襲われるはず。起こり得ないことは勝手に想像しない」ことだと語る。 「分からないことを考えて疲れちゃうのがいちばんよくない。それが相手の狙いだったりします。脅迫をしてくる人は、理不尽な要求をのませようとしていることが多い。だから、きちんと見極める必要があります。 僕のしたことによって、相手に実害があったのか? メンツをつぶしたのか? 虚偽のことを書いていたのか? そのような過失があった場合は、まっすぐな話になるんです。そのときはしっかりと、相手の目を見て対応します」