101歳〈ギネス認定〉世界最高齢の薬剤師。問診票だけでなく、会話を通じてその人の症状に合う薬を選ぶ。元気の秘訣は野菜たっぷりの食事
長生きするなら自分の足で歩き、毎日笑顔で過ごしたい――。元気に趣味や仕事を楽しむ93歳と101歳の女性の暮らしぶりを聞いてみると、その希望を叶えるヒントが見えてきました(撮影:藤澤靖子) 【グラフ】幡本さんのとある日の過ごし方 * * * * * * * ◆財産を失い一念発起 東京・目黒区の住宅街、昔ながらの佇まいの「安全薬局」を訪れた。「外は寒かったでしょう? どうぞ座ってください」と笑顔で筆者を出迎えてくれたのは、御年101歳の店主・幡本圭左さん。カウンターには、「世界最高齢の薬剤師」のギネスブック認定証が燦然と輝いている。 「これは100歳になる少し前にいただいたものなんです。今は101歳なので、自分の記録を更新してしまいました(笑)」 圭左さんがこの地に店を構えたのは、約70年前。店舗兼住居の建物はほとんど、店を開いた当時のままだ。営業時間は月~土曜の10時~18時。休みは日曜と祝日のみだというから、かなりハードである。 「店が多忙になり、見かねて同じ薬剤師の次女夫婦が帰ってきてくれました。開業当時は市販薬や雑貨などを置いていましたが、次第に漢方中心に。現在は病気予防のための和漢薬などを扱っています」
圭左さんの起床は7時。目覚めたら10分間、ベッドの上で腕や脚を伸ばしたり自転車をこぐように関節を動かしたり、自己流の体操をして体をほぐす。スッと伸びた背筋にキビキビした動き。肌もつややかで若々しい。一体どんな食生活を送っているのか――。 「食事の支度は娘がしてくれるの。朝はトマトや豆類、ゆで卵、ハムなどが入ったサラダと、バナナ1/2本、チーズ、パン。それと手作りのヨーグルトを食べます。ワインや焼酎に漬け込んだ干しぶどうを小さじ2杯混ぜるのが、私のこだわりです」 昼は、ごぼうやかぼちゃなどあるものを何でも入れた具だくさんの減塩味噌汁とご飯、魚料理が定番。圭左さんも娘夫婦も甘いものに目がなく、17時のおやつタイムは欠かさない。 「夜はしょうが焼きなどの肉料理で、3食とも野菜はたっぷり。シニアの3人家族とは思えない消費量です。入浴を済ませたあとは、テレビの時間が楽しみ。スポーツ観戦がとにかく大好きで、先日のサッカーアジアカップは大盛り上がりでした(笑)」 圭左さんは1922年、長野県に生まれた。一家で東京に引っ越したのち、「これからは女も手に職を持つべき。免状は役に立つし、薬剤師ならずっと続けられる」という父親の勧めで、東京・谷中の東京薬学専門学校(現・東京薬科大学)女子部に進学。20歳で卒業し、化学工場の研究室に就職した。 「働き始めて2年が過ぎた頃、徐々に戦争が激しくなり、父も体調を崩して亡くなったため、家族で長野に疎開しました。東京では空襲で焼け死んだ人が隅田川に浮かんでいるのも、機銃掃射で隣家の梅干しのが割れるのも見ています。それでも私は無事でした。何かに守られていたとしか思えません」
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