101歳〈ギネス認定〉世界最高齢の薬剤師。問診票だけでなく、会話を通じてその人の症状に合う薬を選ぶ。元気の秘訣は野菜たっぷりの食事
終戦後、25歳で結婚。夫婦で東京へ戻り家を建てた。2人の子どもに恵まれ、さあこれからという時に、暮らしを一変させる出来事が起こる。商売をしていた夫が親友の保証人になり、財産を失ってしまったのだ。 「残ったのは小さな家だけ。これは大変だと頭を抱えました」 そんなある日、夫の友人からある提案が。それは、圭左さんが持っている薬剤師の資格を生かして、薬局を開いてみてはどうかという話だった。 「夫もやってみようと言うので、住んでいた家を売ってオンボロの平屋を購入しました。右も左もわからないなか、薬局をやっているお友だちのところで勉強させてもらい、開店にこぎつけました。30歳の時です。日本経済が発展していく時期で、風邪薬も石けんも、並べたそばから売れました。父が言ったとおり、お免状が役に立ったわけです」 その後、先輩の勧めで漢方を学ぶため学校に通った圭左さん。工学部出身の夫も一緒に勉強して助けてくれたという。 「ずっと二人三脚でやってきましたが、15年前に夫は亡くなりました。店で倒れ、病院に運ばれて1週間という早さでした。突然のことで悲しみはありましたが、何もわからないまま静かに逝けたのでいい最期だったと思います」
◆お客さんの声が励みに 以来今日まで、娘夫婦の協力を得ながら店を続けている。店で扱う漢方薬や自然薬は、必ず自分で試すのが圭左さんのポリシーだ。 問診票だけでなく会話を通じてお客さんの症状に合う薬を選ぶ、商品を送る際には直筆の手紙を添えるなど、その姿勢は一貫して変わらない。常連客の中には、30年、40年と通い続けている人もいるという。 「たとえば風邪薬ひとつお出しするのでも、少しおしゃべりすれば、その方のことがよりわかるでしょう。会話があると人とのつながりができますし、何より楽しいですから。 手紙も、時候の挨拶だけでは味気ないので、世間で起きている面白い話などを入れるようにしています。だから書くのに時間がかかっちゃって(笑)。夜寝るまでの時間やお店が暇な時など、ずっと机に向かって書いています」 現在、5人の孫と8人のひ孫がいる。自身が不健康では申し訳ないと、お酒は飲まずタバコも吸わず、若い頃から体をいたわってきた。 年齢とともに減少する脳細胞を補うため、今も文献を開き、新たな知識を吸収している。何度も読み込んだ跡のある分厚いテキストが、彼女の情熱を物語っていた。 「薬剤師の集まりに行っても、お会いするのは年下の方ばかり。それも元気でいられる秘訣かもしれません。私自身は年齢を意識していないので、101歳なんてすごいですね、と言われてもピンとこないのですが(笑)」 とはいえ、週6日も店に立つのは体力的にも厳しいはず。店を閉めようと思ったことはないのだろうか。
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