競泳から転向後、3度オリンピックに出場。貴田裕美が語るスポーツの魅力「引退後もこんなに楽しい世界がある」
指導者としての強み「メンタル的なサポートができるように」
――2021年に引退されて、現在は日本水泳連盟OWS強化戦略スタッフとしてナショナルチームの強化に携わっていますが、指導する立場での強みはどんなことだと思いますか? 貴田:競泳とOWSの両方で日本代表経験があることと、長い期間第一線で競技をするなかで経験を積んできたことだと思います。体格には恵まれませんでしたが、自分の強みを活かし、ライバルたちに勝つ方法を常に考えていました。競技を通じてさまざまな人に出会い、いろんな価値観に触れたことも強みになると思います。 ――指導側になってから、競技に対する思いに変化はありましたか? 貴田:「結果を出さなければ」というプレッシャーからは解放されましたが、知り合いや先輩から「一緒にリレーに出たい」とか、「記録を出したいから一緒に出てほしい」と相談されることもあります。自分のためには泳がなくなってしまいましたが、人のためにだったら頑張ろうと思えるので、時々楽しみながら泳いでいます。 ――指導する上で大切にしていることはどんなことですか? 貴田:OWSは長距離なので試合も長時間になりますし、体力的にもすごくきつい競技ですから、トレーニング時間も長いです。そのなかでメンタル的にきつくなる選手もいるので、そういう選手たちのメンタル的なサポートができたらと思っていて、そこにやりがいを感じています。オリンピックに行くまでの過程や、「この練習を乗り越えたらこのレベルまでいける」ということは経験上、ある程度わかっているのですが、それを選手に求めると難しい時もあります。選手たち一人一人の個性があって、できることとできないことがあるので、自分の物差しだけで測ってはいけないと感じます。ただ、ナショナルチームなのでオリンピックを目指している選手が多く、求めるレベルを下げてはいけない。その難しさを感じながらやっています。 ――今後、どのようにスポーツに関わっていきたいですか? 貴田:私は水泳に限らず他のスポーツの選手と話すことが好きなので、競技の特性や魅力、その選手の強みなどをいろんな選手に聞いてみたいです。機会があればやってみたいのは、ダンスとサーフィンです。見ていて楽しい競技だと思いますから。チームスポーツも一度体験してみたいですね。個人競技は自分が頑張った分が結果として現れますが、チームスポーツはチームの目標に向けて協力し合い、個の力はもちろんですが、メンバーとの連携や相互サポートも必要になるので、スポーツの楽しさを仲間と共有できるのがいいなと思います。