考察『光る君へ』47話「命を懸けた彼らの働きを軽んじるなぞ、あってはならぬ!」実資(秋山竜次)に拍手!次回最終回、倫子(黒木華)の言葉のその先には?
双寿丸の言葉
「刀伊の入寇」の恩賞が自分が求めた通りにならなかったとはいえ、隆家は大宰府の皆に語り掛ける。 隆家「武者たちが国守となり各国の要となって働けるよう、この先も朝廷に働きかけ続けるゆえ」 ……あー。実資が陣定で激昂した場面でも思ったのだが、朝廷の力が及ばないところでの戦闘が頻発するようになったらどうなるのか。国守となった武者たちは、この先もずっと朝廷の命令に従うのか。 私たちは、この後何が起きるのか、どんな時代になってしまうのか知っている。が、その時代に真摯に生きていた人々を裁くことは私にはできない。 これからの世を生きてゆく若者・双寿丸(伊藤健太郎)が「殺さなければ殺される。敵を殺すことで民を守るのが武者なのだ」とケロッとして明るく言うのが象徴的である。
乙丸一世一代の我儘
まひろの身を案じ続ける道長が、ようやく(この手があったか)と気づいたようで、娘の賢子(南沙良)に母からの文はあったかと消息を訊ねる。 まひろは生きていた……! 安堵のため息。よかったっすね。そして賢子に、 道長「太皇太后様にはお目をかけていただいておるか」 賢子は道長の慈しむような視線の意味がわかっていない。 この世に、ただ健やかでいてくれればそれでいいと思える人がいる。道長にとっても賢子にとっても、そうした存在であるのが一番いいのだ。 隆家が太宰権帥の任を解かれて都に戻る。隆家がまひろに「共に都に戻らぬか」と問うが、意気消沈しているまひろは答えあぐねる。そこに乙丸が、 「御方様! 私はきぬに会いとうございます!帰りましょう!帰りたい!帰りたーい! きぬに会いたーい!」 乙丸は今までどんなことがあっても、まひろにもその家族にも意見を言うことはなかった。その彼が、必死に我儘を装ってまひろを都に戻そうとしている。一世一代の我儘だ。 目頭が熱くなり、都の大路を隆家一行と帰ってくる乙丸の笑顔に泣いてしまった。乙丸は、彼の一生の願い「今度こそ御方様をお守りする」を果たしたのだ。 よかったね、よかったね……。 そして、きぬ(蔵下穂波)にお土産の紅を渡す場面にまた泣いた。ここは厨の外から、ふたりの様子をそっと窺っているような画面演出もいい。紅を見て大喜びするきぬ。本当によかったね……乙丸ときぬの夫婦に幸多かれ。 帰還した夜、『源氏の物語』を感想を母に伝える賢子。賢子の「母上は私の母上としてはなっていなかったけれど」という批評に思わず笑ってしまう。しかし、その才能は認める。 親を客観的に冷静に見られるのが大人の証である。立派だ、賢子。 そして彼女が物語から得たものは、政の頂に立っても、好きな人を手に入れても、よい時は束の間。幸せとは幻。 賢子「どうせそうなら、好き勝手に生きてやろうかしらと思って」 まひろ「よいではないの! 好きにおやりなさい」 物語を通して、娘の背中を力強く押すことができた。これぞ母親としての本懐であろう。 まひろも立派だよ。
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