考察『光る君へ』47話「命を懸けた彼らの働きを軽んじるなぞ、あってはならぬ!」実資(秋山竜次)に拍手!次回最終回、倫子(黒木華)の言葉のその先には?
秋山竜次に拍手を
隆家たちの刀伊撃退の功績についての褒章を協議する陣定が開かれた。 朝廷に報告が届いていない期間に行われた戦闘、朝廷の命令でない戦。それに褒章を出すことはできないと主張する、行成と公任。 実際、これまでこの作品の中でも(33話/寛弘3年(1006年)、朝廷の許しなく合戦を繰り返す平維平(たいらのこれひら)を伊勢守に任じるなどもってのほかという議論があった。朝廷が武力を持つ者を制御する点を重視する、そういう意味では公任の「前例を見ても」は筋が通っている。 通ってはいる……が、しかし。外敵から民を守った者の戦闘を「関わりなき戦」と言われるのは、納得が行かない……とフラストレーションが溜まりにたまった瞬間、実資が叫んだ。 「なにを申すか!」「敵を撃退した者に褒章を与えねば、この先ことが起きたとき奮戦する者はいなくなるであろう」「都であぐらをかいていた我らが、命を懸けた彼らの働きを軽んじるなぞ、あってはならぬ!」 実資ーーーー!!!! 全国で実資コールが巻き起こったのではないだろうか。 藤原実資という名前は、歴史好き、平安時代好き以外にはおそらくそれほどに知られていないと思う。しかしこの一年で、俳優・秋山竜次がその名前と存在を視聴者に知らしめたのだ。大河ドラマファンには忘れられない人物となっただろう。好演に拍手喝采である。
『和漢朗詠集』だ!
その夜、道長が実資の陣定の結果報告を聞いているところに、公任が訪ねてくる。 この場面、わかるようでわからない。 公任「俺達にはそんな姿見せぬのに、実資殿には見せるのだな」 (突然どうした、わからない) 公任「隆家はお前の敵ではなかったのか! ゆえに俺は隆家をかばわなかった、お前のために!」 (国家の危機と政争を天秤にかけたのだな、わかる) 道長「国家の一大事にあっては隆家の前に起きたことの重大性を考えるべきである」 (それな)(わかる) まあまあ、と仲裁に入った斉信「なにがあっても俺は道長の味方だから」 (いやだから、突然どうした。わからん) わからん……とポカーンとしていたが、翌日『和漢朗詠集』を開いて眺めている公任を行成が訪ねてきた場面で、はたと気づいた。 公任が編纂し行成が清書した『和漢朗詠集』! 当時の貴族社会において重要な文化であった朗詠。それにふさわしい漢詩、漢文、和歌を集めたものだ。その後の日本文学……『平家物語』などの軍記物にもこの書から詩歌が数多く引用され、貴族・武家ともに必須の教養書となっていった。日本の文化全体に及ぼした影響ははかりしれない。朗詠のお題が並んでいて、ドラマの中で公任が見ているのは「祝」の章。ここに、今の私たち誰もが知っている和歌が美しい手蹟で書かれている。 わかきみはちよにやちよにさされいしのいはほとなりてこけのむすまて (我が君は千代に八千代にさざれ石の巌となりて苔のむすまで) 『古今和歌集』から、読み人しらずの歌。そう。国歌「君が代」の元歌である。 このように、のちのちまで多くの人が触れることになる詩歌が集められた書だ。今でも現代語訳つきの本が出版されているので、ぜひ「公任様のみが成しえた大仕事」を読んでいただきたい。 公任の怒りの場面はよくわからなかったが、四納言の皆が道長を大切にしているのはわかった。
【関連記事】
- 考察『光る君へ』24話 まひろ(吉高由里子)に忘れえぬ人がいても「まるごと引き受ける」宣孝(佐々木蔵之介)の大人の余裕と包容力!
- 考察『光る君へ』25話 まひろ(吉高由里子)を娶ったとわざわざ報告する宣孝(佐々木蔵之介)、動揺を隠せない道長(柄本佑)
- もっと考察『光る君へ』平安初心者の夫に「衣装の違いを知ると、ドラマがぐっと身近になる」と語ってみた(特別編)
- 考察『光る君へ』26話「中宮様が子をお産みになる月に彰子の入内をぶつけよう」愛娘をいけにえとして捧げる道長(柄本佑)に、権力者「藤原道長」を見た
- 考察『光る君へ』34話『源氏物語』が宮中を席巻!光る君のモデル探しに公卿たちも夢中、一方まひろ(吉高由里子)のおかげで出世した惟規(高杉真宙)は危うい恋の垣根を越えようとしている?