考察『光る君へ』47話「命を懸けた彼らの働きを軽んじるなぞ、あってはならぬ!」実資(秋山竜次)に拍手!次回最終回、倫子(黒木華)の言葉のその先には?
まひろを見舞う隆家
乙丸の力で大宰府に無事帰ることができたものの、まひろは憔悴しきっていた。 無理もない。目の前でまた大切な存在を奪われたのだ。母・ちやは(国仲涼子)といい直秀といい、たね(竹澤咲子)といい。生きるということは、愛しい人々を見送るということでもある。 そんな彼女を、隆家が見舞う。 隆家「俺も色々あったが……哀しくとも苦しくとも人生は続いてゆくゆえ。仕方ないな」 大切な家族を喪い続けた隆家が辿り着いた「仕方ないな」。投げやりな意味ではなく、現実と向き合わねばならなかった人間ならではの温かい言葉だ。 まひろが最後に見た周明はまだ息があったので、もしかしたら助かったのかもという淡い期待を抱いたが、彼の骸は弔われることなく死んだ賊たちとともに海風にさらされている──。いずれ土に還ってゆくことだろう。さようなら、周明。お疲れ様でした。 隆家からの報告によって、「刀伊の入寇」の終結を道長に報告する実資が、朝廷も武力を持つべきではないかという話をする。 実資「平将門の乱以降、朝廷は武力を持たなくなりました。それから80年が経ち、まさかこうして異国の賊に襲われることになろうとは……もはや前例にこだわっていては、政はできぬと存じました」 平将門の乱。大河ドラマ『風と雲と虹と』(1976年)でも描かれた、桓武天皇の血を引く軍事貴族・平将門が935年に起こした関東での内乱。これについて書き始めたら10ページあっても足りない。とにかく武者という存在を朝廷が強く意識せざるを得なかった歴史的大事件である。よくぞここから80年以上、大きな戦をしない世を保てましたねと先人たちの努力と知恵に敬意を払いたくなる。 実資の言葉に「武力に頼る世になってはならん!」と反対する道長。この理想は時代の波に流されて、儚くなってしまうのだろうか。 しかし、その話が終わると、 「大宰府の隆家に文を出すなら消息を聞いてもらいたい者がおるのだが」 まひろのことが心配で仕方がないんだね……離れた地にいる人の安否がわからないと夜も眠れないほどの不安に襲われる気持ちはわかる。 でも実資に頼もうとするくらいなら、もてなしを命じた時と同じように隆家に直接「太皇太后様の女房・前越後守為時の娘は無事か。太皇太后様がいたくご心配あそばされておる」と文を書いてもいいと思うのよ、道長。
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