受け継いだ価値を進化させ繋ぐ「アトツギ」を、憧れの存在に。【 一般社団法人ベンチャー型事業承継代表理事 山野千枝】
「こうあるべき」にとらわれず、自分の感性や思いを大切にしながら働くことを通して社会にインパクトを与える次世代のロールモデルたちに光を当てるフィガロジャポンBusiness with Attitude(BWA)Award。4回目となる今年のテーマは、「新しいスタンダードを築き上げる女性たち」。社会や業界の課題に向き合い、自身の熱い思いを胸に、新しい生き方、働き方の可能性を発信する女性たちのストーリーを紹介します。 【写真】これまでのBWAアワード受賞者を見る
山野千枝【 一般社団法人ベンチャー型事業承継代表理事 】
山野千枝(やまの ちえ):1969年、岡山県生まれ。コンサルティング会社を経て、2000年より大阪産業創造館に創業メンバーとして参画。ビジネス情報誌の編集長として多くの経営者を取材するうちに、後継者たちが社会に活力を与えていることに着目。18年、一般社団法人ベンチャー型事業承継を設立。社会に新しい価値を生む後継者の新規事業開発や業務改善を後押しする。企業のブランディングを手がける千年治商店の代表取締役でもある。https://take-over.jp/
日本の企業の99%を占める中小企業は、日本経済の活力を支える重要な存在だ。しかしいま、全国で社長の高齢化が進み、後継者の不在が課題となっている。最近では子どもに苦労させたくない、あるいは子ども自身が継ぎたくないといった理由で廃業するケースも少なくない。 「後継ぎというと、世間では役立たずとかボンボンといったネガティブなイメージを持たれることがある。でも実際には、会社の存続のために歯を食いしばって、技術革新や新規事業の開発に挑んでいるかっこいい後継者がたくさんいます」と、一般社団法人ベンチャー型事業承継代表理事の山野千枝は言う。 「スタートアップには群がるのに、後継者が見過ごされているのは残念でなりません。さまざまな困難を乗り越えて挑戦する後継ぎたちを憧れの存在にしたい。それが地域の次世代にも繋がるから」
後継者に着目したきっかけは、中小企業を支援する大阪産業創造館のビジネス情報誌「ビープラッツ」の編集長として、多くの経営者を取材したことだった。コンセプトは"路地裏のヒーローを探せ"。とりわけ心を動かされたのが、後継ぎたちの話だ。順風満帆な成功譚ではなく、親子であるがゆえの軋轢に悩み、苦しい経営と向き合いながら会社を進化させた人たちの話は熱量に満ちていた。産婦人科医院を営む家に生まれた山野も、3代目の父と後を継いだ弟のぎくしゃくした関係を見ていたから、ファミリービジネスの難しさは身に染みている。 「世代交代の難しさは、コンサルタントの力で解決できるものでもない。もっと本質的に事業継承のイメージを変える環境や文化を作っていこうと動き出しました」