他人事じゃないAIによる「雇用崩壊」、インドで生じている「笑えない懸念」とは
政府はどう対処している?
こうした状況の中でも、インド政府および企業は、AIによる悪影響以上の恩恵を予想しており、積極的に生成AI開発・投資の取り組みを進めている。 その1つが、「Indic LLM」と呼ばれるインドの主要言語に対応した大規模言語モデル(LLM)の開発の取り組みだ。インターネットを英語以外のローカル言語で利用する大規模なインド人口を背景に、AIスタートアップであるSarvam.aiによるヒンディー語に特化した初めてのLLMである「OpenHathi」、同じくAIスタートアップのCorover.aiによる「BharatGPT」やTech Mahindraによる「The Indus Project」などインド国内企業による複数の取り組みが同時並行で進められている。 グローバル企業も、インド拠点をベースにAI関連の取り組みを活発化している。傾向として見られるのは、AIを戦略的に活用することで、インド拠点を単なるコストセンターではなく、付加価値の高いセンター・オブ・エクセレンス(COE)にアップグレードする動きだ。特に金融サービス、小売、消費財企業の取り組みが目立つとされる。 一方規制面では、インド政府はAI開発の機運を毀損(きそん)しない形で関連リスクを低減させるバランス型のアプローチを採用している。。2023年12月には、電子情報技術省(MeitY)が、デジタル・インターミディアリーとプラットフォームに対し、AIやディープフェイクによるデマ情報への対策を求める勧告を発表するなど、すでに数件の勧告を行っている。 また、今年3月には、違法なコンテンツのホスティングや表示、アップロード、共有を防止するための新たな勧告を発令。AIプラットフォームやソフトウェアがバイアスや差別を助長したり、選挙プロセスの健全性を脅かしたりしないよう求めている。また、ユーザーがAIソフトウェアを使っていることを認識できるようにすることや、AIで生成されたコンテンツに適切なラベルを付けるなどの対策も求めている。