他人事じゃないAIによる「雇用崩壊」、インドで生じている「笑えない懸念」とは
AIが「若年層の雇用」を奪う?
Capital Economicsによると、インドのアウトソーシング産業は、同国における全雇用においてわずか0.4%を占めているにすぎないものの、GDPでは6.5%、輸出では25%を担っているという。また、失業者の8割以上を占める若年層の雇用を、アウトソーシング産業が支えているという事実もある。AIによる自動化が進めば、インドのモディ首相に対する雇用創出への圧力が強まるなど、政治的な変化を促す要因になる可能性も指摘されている。 ただしCapital Economicsは、アウトソーシング産業がAIによって壊滅的に縮小しても、インド経済全体への影響は限定的だと予想。最悪のシナリオでも、インドの年間GDP成長率を0.8%ポイント押し下げるにとどまる見込みという。
米中より高いインドの「ある数字」
アウトソーシング産業は、業態的な性格から生成AIの影響を真正面から受けることになる一方で、ほかの産業ではAIが恩恵をもたらす可能性も予想されている。 たとえばインド気象庁は、天気予報の改善や異常気象の予測にAIを活用する計画を明らかにしており、農業分野への好影響が期待されている。またAIを活用してファイナンスコストを引き下げるスタートアップが登場するなど、さまざまな産業のコスト削減が期待されている。 インドは世界的に見ても企業のAI導入率が高く、AIによる影響を考える上では無視できない国となっている。 IBMが今年2月に公表した調査「グローバルAI導入指数2023」によると、インドでは、従業員1000人以上の企業の59%がAIを積極的に活用していることが明らかになった。これは調査対象国の中で最も高い割合となる。インドのほかには、アラブ首長国連邦(58%)やシンガポール(53%)が高いAI導入率を示している。さらに調査では、インドはAI先進企業の74%が過去2年間でAIへの投資を加速させており、研究開発や従業員の再教育などに注力していることも明らかになった。