18年間特大弁当を作り続けて亜希が気づいた、母親は「言うまで待とう、ホトトギス」
自分を奮い立たせてくれる理由に
――お弁当づくりが面倒だったり、緊張したりということがないとおっしゃっています。料理が得意になったのはいつからですか。 福井県の実家に住んでいた頃に、母の手伝いをよくしていました。 両親が離婚し、シングルマザーになった母に育ててもらいました。裕福ではなかったので、一食をいかに安く、おいしくできるか、そんなごはんの見本でした。 贅沢ではないけど、アイディアや工夫には溢れていたのかな。 決して料理上手というタイプではなかったように思うんですが、子どもを育てる知恵はありましたね。 今、生きていたらその知恵をもっと聞きたかったなあと思います。 ――お母さんのお弁当で思い出に残っているのは。 厚揚げ! 福井では厚揚げではなく「油揚げ」と呼ぶのですが、よく入っていましたね。それと鶏胸肉。どちらも安価でボリュームがあるでしょう。野菜は毎回ミックスベジタブル。 鶏肉の味付けは、いつも塩こしょうでした。カットもせず、どんと一枚。 ご飯はのりをしいて、お醤油をかけておくと、時間がたってもおいしい。 忙しい母なりの続ける工夫だったのでしょうね。
「最後には自分に返ってくる」と信じて
――これからお弁当づくりを始めるお母さんに、何か一言お願いします。 自分がやってきたことは子どものためと思い込んで、恩着せがましく言ったこともありました。でも今になって、全部自分のためになっていたんだなって、わかるようになりました。 朝の弁当作りは、忙しい。でも、ある意味、息子たちが毎朝のルーティンをくれていたんです。 息子たちの存在があるから、私を頼る誰かがいるから作ろうって気持ちになる。 食べてくれる人がいるから、朝起きる理由になるし、自分を奮い立たせてくれる理由にもなっていたんだなって思います。 散歩に行こう、カフェに行こう。 たまにはいいけど、そんな自分のための理由だけなら、朝5時半から起きてやろうとは思えなかったかも。 息子のためにやってきたつもりでしたが、すべて自分にかえってくることだったんだな、って。それに気が付いた今、お弁当を作り続けた18年間は宝だなって思います。 最初は戸惑うことが多くても当たり前だし、面倒に思う日もあるだろうし、今日は買ってもらっちゃおう、食堂で食べてもらっちゃおう、って日もあって当然だと思う。 それでも最後には自分に返ってくる、という日がきっと来ると思います。 それを信じて、そこそこ手を抜きながら、続けてもらえたら嬉しいなと思います。 私にとっても「これだけはやり続けられた」と、自慢できることだなって思っていますから。 ◇亜希さんの母親の作るお弁当は鶏胸肉がドーンと一枚、切らずに入っていたと言う。一方の亜希さんは、鶏つくねや塩から揚げ、カオマンガイ、チキンカレーとメニューはバラエティ豊かだが、やっぱり鶏肉は頼れる食材に変わりない。 本書より、鶏肉メニューの一押し「山盛りしそ甘酢から揚げ弁当」の作り方をご紹介する。