【アナリスト解説】なぜ政権交代できなかった? 自公で過半数割れでも「選挙前から望みゼロだった」
先月の衆議院選挙を受けた特別国会が召集されました。総理大臣指名選挙では決選投票の末、石破茂・自民党総裁が指名されました。野党はなぜ政権交代できなかったのか、政治アナリスト・伊藤惇夫氏の解説です。 「自さ社連立」以来30年ぶりの決選投票 「立憲がリーダーシップを取っていく」辻元清美氏に聞く 今後の立憲の進む道は?
国民と立憲は”元カレ・元カノ” そもそも選挙前から「野党連立・政権交代」は望みゼロだった
立憲民主党の野田代表は、政権を何としても取りたいので、「総理指名選挙は野田佳彦と書いてほしい」とを各党に求めていました。決選投票では、前向きな意向を示していた共産党の票が上乗せされたとみられています。一方で、日本維新の会と国民民主党は否定的でした。「そもそも選挙前から政権交代の望みはゼロだった」と伊藤氏は指摘します。 伊藤氏: 予想外に自民の議席が減ったのは事実ですが、立憲がどこまで頑張っても第一党になるのはまず難しいだろうというのがありました。また“野党連立”についても、野党が結集すると思っている人はほとんどいませんでした。維新・馬場代表は、過去に「第2自民党でいい」や、「自公が過半数割れを起こした場合、連立政権入りも否定しない」といった発言をしたこともありました。国民民主党については、立憲とは仲たがいした“元カレ・元カノ”みたいなもので、元の鞘に収まることはなかなか難しいです。
「打倒公明」で”維新の連立入り”は消えた ”スキマ産業”国民民主のうまい立ち回り
こうした中で注目を浴びるのが国民民主党です。与党とも野党とも“うまくやろう”としていて、「隙間産業としてうまい生き方」と伊藤氏は語ります。 伊藤氏: 選挙の結果、28議席という“絶妙の議席”を獲得したわけです。一方で維新の方が議席数は多く、「自民は維新と組めばいい」という人もいると思います。しかし選挙期間中、自民党幹部が密かに集まって「万が一、自公で過半数を割った場合は、国民民主党の協力を得よう」という話をもう先にしていました。 その理由の1つは「公明と維新の仲が悪い」ということ。先の衆院選で大阪では、維新が公明が立候補する選挙区に候補者をぶつけたこともあり、連立入りは公明が嫌がります。 もう1つは、以前から国民民主党が自民に寄っている姿勢を示していたこと。両党の関係は悪くありませんでした。当初は、指名選挙で国民民主に「石破氏」と書いてもらいたいという願望が自民にあったようです。それは玉木代表が断わりました。だから非常にうまいですよね。ただ、言ってみれば一種の“綱渡り状態”ですから、バランス崩すとどうなるのかということがありますね。