〈65歳の平均は約50秒〉片足立ちができないなら、疑うべきサルコペニア肥満、認知症…体の老化状況を把握する、診断の仕方
内臓肥満も体のバランスに大いに関係している
サルコペニアに加えて、歩くための体のバランスをとれるかどうかには、内臓肥満も大きく関係しています。 内臓肥満の評価のために現在よく使われるのが、へその高さのレベルでのCT画像をもとに算出される内臓脂肪の面積です。 内臓肥満については、メタボリック症候群の診断基準でも用いられる「内臓脂肪の面積が100平方センチメートル以上」としています。 そこで、大腿筋の断面積と内臓脂肪の面積が、姿勢の不安定性の指標である「重心動揺総軌跡長」(重心点の総移動の距離)と関連するかどうかを多変量解析を用いて解析しました。その結果、大腿筋の断面積と内臓脂肪の面積は、独立して重心動揺総軌跡長との関連がみられました。 このことから、大腿筋の断面積の低下と内臓脂肪の面積の増加は、ともに重心動揺総軌跡長を延長することが示唆されています。 正常群、サルコペニア群、内臓肥満群、サルコペニア肥満(サルコペニアに加えて内臓脂肪の面積が100平方センチメートル以上ある場合)群の四つの群において、それぞれの重心動揺総軌跡長の比較を行った結果、四つの群のあいだに明らかな差が認められました。 さらに、サルコペニア肥満群は、正常群と比較して、明らかな総軌跡長の延長を示したことから、サルコペニア肥満では体のバランスを保つことがむずかしくなり、片足立ちの時間が短くなるものと考えています。
片足立ち時間が短いと骨が衰えている
健康診断では、骨密度が骨粗鬆症の診断のために使われるようになりました。厳密には、DXA法という放射線を使った方法で骨密度を測定します。 若年成人(20~44歳の健康な人)の骨密度の平均値を100パーセントとした場合に、あなたの骨密度が何パーセントにあたるかの指標を、YAM値(若年成人平均値)といいます。YAM値が70パーセント未満の場合は、骨粗鬆症と診断されます。 私たちの健診では、レントゲンは使用せず、定量的超音波測定法(QUS法)という方法で踵部の超音波伝搬速度を測定します。QUS法の利点は、短時間で行えて、被曝の影響がないことです。データでみると、QUS法と年齢とのあいだには、男女ともに負の相関が認められました。 さらに、片足立ちの時間を20秒ごとに四つの群に分けて、踵骨超音波伝搬速度(SOS)との関係を検討しました。 それによると、片足立ちの時間が60秒未満の三つの群では、60秒間立てる群にくらべて、男女ともSOSが低値で、片足立ちの時間が短いと骨が衰えていると考えられます。