〈65歳の平均は約50秒〉片足立ちができないなら、疑うべきサルコペニア肥満、認知症…体の老化状況を把握する、診断の仕方
『百歳まで歩ける人の習慣 脚力と血管力を強くする』#2
抗加齢医学研究に長年携わってきた伊賀瀬道也氏は「一生歩けるためには、体のバランスをとることが重要である」という。そこで今回は自宅で簡単にバランス力をチェックできる方法と、バランス力がない場合に疑うべき病気について教えてくれた。 【図】何秒できる? 開眼片足立ち診断の基本姿勢 『百歳まで歩ける人の習慣 脚力と血管力を強くする』(PHP新書)より、一部抜粋・再構成してお届けする。
65歳の集団では片足立ちの平均は約50秒
私は、一生歩けるためには、体のバランスをとることが重要であると考えています。体のバランスである平衡機能を医療機関で評価する場合には、多くは重心動揺計を用いた重心動揺測定を行います。 ですが、この検査は、重心動揺計を常備している施設でしか行えないという難点があります。そこで、検査の場所を選ばず、短時間で測定できる検査として「開眼片足立ち診断」があります。 加齢にともない、バランスをとるための「体性感覚」(自分の体がいまどのような状態にあるのかを認識する力)に関与する受容体(レセプター)の数が減少するという報告があります(「エクスペリメンタル・ブレイン・リサーチ」2001年)。 開眼片足立ち診断は、体性感覚の一部をあえて失わせた状態にするテストで、体性感覚に加えて、筋・骨格系、神経系などの低下を評価するための総合的な指標と考えられています。 《開眼片足立ち診断をやってみよう》 (1)転倒リスクを避けるために、壁から50センチメートル程度離れて立ちます。 (2)両目を開けて、両手を楽にして、左右どちらかの足を上げます。 (3)床に着いている足がずれるか、体の一部が床や壁にふれたら終了です。 こうして、2回測定し、時間が長かったほうを記録します。私たちのデータでは、平均年齢65歳の集団では、片足立ち時間の平均は約50秒でした。
大腿筋の断面積がサルコペニアの指標
歩くために重要な筋肉ですが、加齢とともに体の筋肉量は減っていくことが知られています。この現象を「サルコペニア」と呼びます。 私たちは、サルコペニアを評価する筋肉量の指標として、大腿筋の断面積を使っています。 大腿筋の断面積は、鼠径部から膝蓋骨上縁の中点を大腿中部とし、この部位のCT画像をもとに、医用画像ビューアシステム「OsiriX(オザイリクス)」を用いて、CT値0~100HU(CT値の単位はハンスフィールドユニット)を示す領域を筋肉として計測します。 大腿筋の断面積は、総面積とともに、膝を伸ばすときに働く筋(伸筋)である大腿四頭筋のみの断面積(四頭筋断面積)と、ハムストリングスを代表とする大腿を曲げるときに働く筋(屈筋)群の面積(非四頭筋断面積)を区分した、左右の平均値を測定したものも用いています。