子どもの鼻血が出たら「やってはいけないこと」とは? 医師に聞く、“正しい”止血法
■鼻血が出るのはどんなとき? Q のぼせると鼻血が出るというのは本当ですか? 血管が広がると血流がよくなり、傷や刺激により、出血しやすい状態になります。「のぼせる」ことを、首から上の部分の血流がよくなることととらえた場合、鼻血は出やすくなるといえます。例えばお風呂に入った後や、熱中症気味になったときなどです。 漫画やアニメなどで、「好きな女の子に見とれて、鼻血を出すシーン」がありますが、ドキドキして頭に血がのぼり、鼻の粘膜の血流もよくなった、と考えれば、あり得ない話ではないですね。 Q 鼻血の出やすい子、そうでない子の違いは何ですか? すでにお話しした通り、鼻血の主な原因はキーゼルバッハ部位が傷つくことです。ですから、「鼻をよく触る子」「鼻くそをよくほじる子」などは鼻血が出やすくなります。また、鼻血が頻繁に出るようになると、傷ついた血管の周囲に、「新生血管」という、新しい血管ができやすくなります。この血管は通常の血管に比べ、もろくて刺激に弱いため、鼻血を繰り返しやすいという悪循環が起こります。 また、アレルギー性鼻炎があるお子さんも要注意です。病気により、鼻の粘膜が弱くなっているため、鼻をかんだときなど、ちょっとした刺激で鼻血が出やすくなってしまいます。子どものアレルギー性鼻炎は近年、増加、低年齢化していて、0~4歳の有症率は3.8%、5~9歳では30.1%です(出典:鼻アレルギー診療ガイドライン2020年度版)。子どもの場合、症状をうまく表現できず、鼻をこする、口呼吸などの症状で気付かれることもあります。アレルギー性鼻炎は子どもにとってもつらいものです。今はとても効果があり、眠くなりにくいお薬で症状がおさまるので、ぜひ、早めに治療につなげてほしいと思います。
■止血の正しい方法は? Q 鼻血が出たらどうすればいいですか? 下を向いて、鼻血が出ているほうの小鼻のあたり、つまりキーゼルバッハ部位を小鼻の上から指でギュッと押さえます。その状態を10分くらい維持していると、止まるので、指を離してもらっても大丈夫です。そこで鼻をいじるとまた、鼻血が出るので注意してください。 子どもが大きければ自分で押さえさせていいと思います。小さいお子さんの場合は静かにできないこともあるので、まずは親御さんのひざの上に座らせること。その状態で絵本や動画を見せながら、親御さんが鼻を押さえてあげるといいでしょう。 また、脱脂綿を棒状に加工してある商品が売られています。キーゼルバッハ部位に入れることで、止血を促します。登園や登校準備で忙しい朝や、外出時で鼻を押さえられないときに使っているという親御さんの話を聞きます。ティッシュや綿を詰めるのでもOKですが、「詰めて、抜いて」を繰り返すことにより、さらに傷ができて出血を繰り返してしまうことがあるので注意が必要です。 Q よくない止血方法はありますか? やってはいけないのは、鼻の根元(鼻根部)を押さえたり、上を向いたりすることです。鼻根部は出血元よりも上にあるので、押さえても鼻血は止まりません。鼻血が止まるまで上を向く方法は、昔、よくやられていました。しかし、鼻血がのどに落ち続け窒息の危険があること、たくさん飲み込むと気持ちが悪くなって吐いてしまうことがあることから、現在は推奨されていません。 Q 耳鼻咽喉科では鼻血に対して、どのような治療をしますか? 鼻血が出ている状態であれば、止血剤の入ったガーゼや綿球を鼻に詰める処置をします。鼻に何かを詰め込まれるのは子どもも苦痛ではあると思いますが、元気に遊び、生活するためには鼻血を止めることが大切であることを説明し、必要に応じて耳鼻咽喉科を受診させてください。耳鼻咽喉科では心配な鼻血かどうかの診断もつくので、気になる場合は気軽に受診をしてほしいと思います。 (構成/狩生聖子) 〇橋本亜矢子(はしもと・あやこ)医師/静岡県立こども病院耳鼻いんこう科医長。2003年大分医科大学(大分大学)医学部卒業。浜松医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科入局、焼津市立総合病院、静岡厚生病院、清水厚生病院耳鼻咽喉科、富士宮市立病院耳鼻咽喉科科長などを経て2015年から現職。 ○参考資料:「鼻アレルギー診療ガイドライン2020年度版」
狩生聖子