高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ 杜撰すぎる「非常戒厳」騒動、日米韓の連携はズタズタだ
韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が2024年12月3日夜に「非常戒厳」を出して以降、韓国政治が混乱している。 【画像】騒動で日韓関係はどうなる 今回の政変はあまりに杜撰(ずさん)で、まるで民主主義国ではあり得ない話だった。非常戒厳のニュースが出た時には、フェイクかと思ったという韓国人もいたくらいだ。結果として、非常戒厳は6時間で撤回に追い込まれた。 ■いまだにはっきりしない事態の真相 それにしても、ネット上で出ている動画を見ると、流血事態の一歩手前で寒気がした。国会において、兵士の銃を奪おうとする者がいて、すんでのところで奪われなかった。 今回の真相はいまだにはっきりしない。ワイドショーで格好の話題になった尹大統領の夫人を守るためというストーリーには、事件が古すぎるという致命的欠陥があった。 少数与党での苦しい国会運営や先の総選挙不正の解明なども、今回の非常戒厳の背景にあるといわれているが、法的に無理筋なのは、法律家の尹大統領であれば、容易にわかるはずだ。いずれにしても、尹大統領は謝罪に追い込まれ、その権限は狭められ事実上の解任状態だ。もっとも与党も今の段階で尹大統領を弾劾し、大統領選を行うのは適当でないので、国会の弾劾決議はかろうじて回避されている。
間隙をぬって万が一にも極東アジアで有事が発生したら......
日韓関係には早くも影響が出ている。1月に予定されていた日韓首脳会談はご破算になった。予定の目途もまったくない。石破茂首相の任期は少数与党で不安定だが、宇野政権をかろうじて超えたものの(編注:宇野内閣の在職日数は69日。石破内閣は掲載日時点で73日)、まさか尹大統領も死に体になるとは予想外の展開だ。 これで、25年1月20日にトランプ大統領が就任するが、当面ウクライナの和平に注力するはずで、トランプ氏の目は極東アジアの同盟国には向かない可能性もある。 幸い、トランプ氏の中国への睨み、北朝鮮のトランプ氏への期待、ロシアもウクライナ和平への思惑で、極東アジアが不安定化する可能性は少なくなっている。 しかし、日韓は政権の体をなしていないので、トランプ氏から当面見放され、日米韓の連携はズタズタになるのは確実だ。その間隙をぬって、もし万が一にも極東アジアで有事が発生したら大変だ。 ++ 高橋洋一プロフィール 高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長 1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。21年に辞職。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。