“号泣県議”野々村被告が裁判を欠席 今後も出廷しなかったらどうなる?
今回のような事態はなぜ起きた?
今回の事態の一つの要因は、在宅起訴での公判となったことです。在宅起訴とは、被疑者が捜査段階において逃亡や証拠隠滅のおそれがないことから身柄を拘束(逮捕)されなかった場合に、その状態のまま起訴されることです。野々村被告が在宅起訴となったのは、本人がお金を返還していること、さらに元県議という身元がしっかりしていることが理由で、「もしこれが一般的な詐欺事件なら逮捕されている可能性が高い(藤元弁護士)」と指摘します。 さらに同じ在宅起訴でも、公判請求をされたときは身柄拘束をされていて、その後保釈が認められたケースの場合は、保釈取り消しや保釈保証金没収の可能性もあるので、被告はまず出頭するそうです。そういう観点から見ても今回の初公判欠席は異例の事態ということでしょう。
過去には「18回欠席」の猛者
では、過去に初公判を欠席して開廷できなかったケースはあるのでしょうか? 実は最近でもあるのです。自動車運転過失傷害などの罪で在宅起訴された40代の被告が、先月の福岡地裁小倉支部で開かれた「初公判」に出席しなかったのです。被告には、約4年間で「初公判期日」が18回も指定されているのですが、一度も出廷していません。報道によると、被告は現在行方不明で出廷させることが難しい状況のようです。 また、在宅起訴ではありませんが、警察官を殴り、傷害と公務執行妨害の罪で起訴された40代の被告が出廷を5回拒否し、大阪地裁での初公判が開廷できなかったケースもあります。出廷拒否の理由は、被告が手錠や腰縄を外した状態での出廷を求めたのですが、裁判官が認めなかったことです。初公判における被告の欠席は異例ですが、例がないわけではありません。
被告の不利益が大きくなる側面も
このまま欠席を続けた場合の裁判の行方を考えてみましょう。藤元弁護士は「被告人を裁判所に強制的に連れて行く『勾引(こういん)』の手続きに入る」と予想します。刑事訴訟法58条は、「被告人が、正当な理由がなく、召喚に応じないとき、又は応じないおそれがあるときは、裁判所は被告人を勾引することができる」と規定しているのです。裁判所が欠席に「正当な理由」がないと判断すれば、すぐに勾引することは可能です。この場合、欠席の回数などは問題でなく、事前に被告が来なさそうなときは、すぐに裁判所は勾引状を発せられるのです。