“号泣県議”野々村被告が裁判を欠席 今後も出廷しなかったらどうなる?
日帰り出張などを装い政務活動費約900万円をだまし取ったとして、詐欺と虚偽有印公文書作成・同行使の罪に問われている元兵庫県議の野々村竜太郎被告。11月24日に神戸地裁で開かれる予定だった初公判を欠席し、この日の公判が中止されました。在宅起訴で身柄が拘束されていないために起こった事態とも言えますが、そもそも裁判を欠席しても問題ないのでしょうか? ニュースでよく見る「容疑者」という呼称とは?
法律の規定はどうなっている?
刑事訴訟法第286条では、「前3条に規定する場合の外、被告人が公判期日に出頭しないときは、開廷することはできない」と規定されています。つまり、原則的に欠席はできません。刑事事件の弁護も手掛ける藤元法律事務所の藤元達弥弁護士は、その立法趣旨について「公判は当事者の攻撃や防御の場です。有罪判決を受けた場合には刑罰を科されるので、被告人を出廷させることがその権利保護のために必要なのです。さらに、裁判所の審理を適正に実施するためにも役立つと考えられるからです」と解説します。被告は公判廷に出頭する権利を有すると同時に義務を負っているのです。 もちろん軽微な事件などの場合に例外もあります。しかし、今回は、詐欺(10年以下の懲役)と虚偽有印公文書作成・同行使(1年以上10年以下の懲役)の罪に問われていますので、例外にはあたりません。原則通りに被告である野々村元県議は出廷する義務があるのです。ただ、このような権利保護の趣旨からか、罰則はありません。欠席すると不利益を被るのは被告という観点からでしょう。 ちなみに、民事裁判における被告はこのような出頭義務を負いません。初公判でも事前に答弁書や準備書面を提出しておけば、その内容どおりに陳述したことにしてくれるのです(擬制陳述、民事訴訟法158条)。ただ、書面を出さずに出頭もしなかった場合は、原告の主張をすべて認めたことになってしまいます(民事訴訟法159条1項,3項本文)。つまり裁判に負けるわけです。