なでしこジャパンが東京五輪開幕カナダ戦に執念ドローも高倉監督の采配に疑問…不可解な選手起用
右足で放った最初のシュートが左ポストに弾かれても集中力を途切れさせず、こぼれ球を難しい角度から今度は左足で押し込み、男子を含めて世界最多を更新中の代表でのゴール数を「187」に伸ばしたシンクレアの執念と技術は脱帽ものだった。 ただ、宮川麻都(日テレ)が左サイドバックで先発したオーストラリア戦でも、その背後を再三にわたって狙われた。チームとして抱える課題が再び露呈した状況で、ともに経験不足ながら潜在能力の点で北村を評価する鈴木氏は対策をこう指摘する。 「北村はまだポジショニングがあまり上手くない。なので、北村に相手の右ウイングをまずはしっかりマークさせて、前方の守備を中盤の選手が、さらにその前方をフォワードの選手がしっかりチェックを入れていかないと、北村は前方へ行っちゃうんですよ」 カナダ戦の先発で言えば中盤は長谷川、フォワードは岩渕か菅澤優衣香(浦和)となる。しかし、初戦を終えたいま、24日に再び札幌ドームで対峙するイギリス女子代表戦では、フォワードの一角は菅澤に代えて、PKこそ外したもののセンターフォワードの動きがしっかりできる田中を先発させるべきだと鈴木氏は言う。 「一番の問題は得点に絡むというか、シュートに絡む場面になかなか菅澤が入って来られないことです。ポストプレーはある程度できるけれども、それ以外のプレーがほとんどできていないし、守備に関してもプレスをかける動きが遅いというか、緩慢と言わざるをえない。これでは、センターフォワードの役割は何も務められないので」 なでしこが所属するグループEは初戦を終えて、チリ女子代表に2-0で快勝したイギリスが首位に立った。チームの中心を担うFIFA女子ランキング6位のイングランド女子代表には通算で1勝2分け5敗と圧倒され、なでしこが世界一になった10年前の女子ワールドカップでもグループリーグで苦杯をなめさせられている。 FIFAランキング37位と実力的にやや劣るチリ戦を最後に控えている状況を考えれば、イギリスには最低でも引き分けたい。ただ、高く険しい壁だととらえているからか。高倉監督は試合後のフラッシュインタビューで、こんな言葉を残している。 「(後半は)自分たちのリズムでプレーできる時間が増えたと思う。1試合、1試合難しい試合になると思うので、次へ向けてしっかり準備したい」 鈴木氏も「グループ内の順位を決める」と位置づける大一番へ。劣勢を強いられながらも勝ち点1ポイントを手にした上に、前線からしっかりプレスをかけて速い攻撃に結びつける形を含めて修正ポイントが明確にあぶり出され、さらには岩渕が最後にエースの輝きを放った点で、ポジティブに受け止めて前へ進むしかない。 (文責・藤江直人/スポーツライター)