「強気で行け!」西野Jが強敵から価値ある勝ち点を奪った裏のドラマとは?
素晴らしかったのは、後半の入り方である。 前半以上に積極的にボールを動かしてペースを掴むと、4分、15分、18分と立て続けに大迫がゴールに迫り、19分には乾のコントロールショットがバーに嫌われる。 逆転は時間の問題だと思われたそのとき、一瞬の隙を突かれるように、71分、セネガルに勝ち越しゴールを許したが、それでも日本はファイティングポーズを崩さなかった。 72分に本田を投入すると、その3分後、今度は岡崎慎司を送り出して2トップへと変更。攻勢を強めると、78分に大迫、乾と渡って最後は本田が左足で蹴り込んだ。 「サブに対してこれだけ前向きに考えられたサッカー人生はなかった。ワールドカップがそうさせてくれていると思うし、一発目で決めないといけないという緊張感の中で準備をしているつもりなので」 殊勲の本田が振り返る。その直前、岡崎が二度に渡ってマークを引き付けて潰れているのも見逃せない。 指揮官の強気の采配も、光った。 本田、岡崎の連続投入で追いついたあと、残り3分という状況で宇佐美貴史を投入――逆転を狙うためのカードを切ったのだ。指揮官は言う。 「抑えの選手を投入するチョイスもあったんですが、勝ちにいきたいという選択をしました」 強気だったのは、采配だけではない。 試合前のミーティングで西野朗監督は「強気に行こう。後ろに引いて戦うということは簡単かもしれないけど、日本らしいサッカー、前でポゼッションしながら、失ったらみんなで取りに行く、強気のサッカーをしよう」と選手たちに説いていた。 「それに勇気づけられたじゃないけど、よしやってやろうっていう強い気持ちに、一人ひとりがなれたんじゃないかと思う」と長友は言った。 前述したように、この引き分けは勝点3以上の価値があるように思われた。 しかし、試合後のミックスゾーンでは、勝点1に満足する者は誰ひとりとしていなかった。選手たちは本気で悔しがっていた。 「勝ち切りたかったというのが本音ですね。良いサッカーをしていたので」と香川が悔しさを滲ませれば、吉田も「ここで勝点3を取りたかったけど、ワールドカップがそんなに楽じゃないぞ、っていうことをアフリカの身体能力がある彼らが教えてくれたかな、って思います」と、自身に言い聞かせるように言った。