英語で相撲ショー、ターゲットは訪日客 大阪の魅力堪能するナイトカルチャー
勢いよく四股を踏む元力士。背後のモニターには「SHIKO」の文字。インバウンド(訪日客)にターゲットを絞ったナイト相撲ショーを提供するエンターテインメント施設「日楽座」が5月、大阪・ミナミの繁華街にオープンした。元力士らがステージ上で迫力のあるパフォーマンスを繰り広げ、現役落語家が英語で進行する。(共同通信=幸坂惟吹) ターゲットを絞る背景には、大阪を訪れる訪日客の急増がある。大阪観光局によると、2023年に大阪を訪れた訪日客の推計は約993万人。円安の進行や国際便の増便を背景に24年には1400万人を見込んでいる。 英語で進行するショーでは、実際の取組のほか、神事として始まった相撲の歴史や、相撲部屋での稽古の様子なども紹介する。「決まり手」や「禁じ手」といった相撲のルールを元力士らが実演しながらユニークに説明するコーナーもある。 英語では、力士は「レスラー」、行司は「レフェリー」。司会進行を務める現役落語家の一人、桂紋四郎さんは「相撲文化を尊重しつつ、外国人にも分かりやすい表現を心がけている」と話す。
夜間公演に特化したのも、訪日客向けのアプローチの一環だ。1日を通して、日本文化に触れられる機会を求める訪日客にとって非常に魅力的だという。 一方、大阪観光局の北中孝幸経営企画部長は「夜間の娯楽施設が充実している東京や、ライトアップに力を入れている京都に比べて、大阪はまだ夜の魅力を堪能できるナイトカルチャーに乏しい」と指摘する。日中の時間帯に観光客が集中する懸念もあるという。 大阪府では17年から「ナイトカルチャー発掘・創出事業補助金」として新規事業者に最大1500万円を交付するなど、取り組みを強化してきた。コロナ禍の影響で中断していたが今年再開する。北中部長は「場所と時間の分散を促進することが観光戦略の上でとても重要。日楽座がそのきっかけになれば」と期待を込めた。 ◎急増する訪日客 国際的な旅行ブームや円安を背景に、政府観光局によると、2023年の訪日客は推計2506万人に上った。今年3月には訪日客が単月で初めて300万人超え。観光産業への追い風となる一方で、観光客が集中し、ごみのポイ捨てや公共交通の混雑など、住民生活を脅かすオーバーツーリズムへの対策が必要とされている。