恐怖の安達太良山、引き返す勇気/執筆:片岡メリヤス
少し下ると爆風は収まりさっきまでの状況が嘘のよう。人も増えた。何人かと話したけれど、途中で引き返した人が何人もいた。そんな中、山頂まで行って降りてきた人がいた。屈強な体格の男性2人組。いかにも強そう。その人たちでさえ「吹っ飛ばされるかと思った」「ギリギリだった」と言っていた。
どうやら台風が接近していたようだった。
あれから何回か爆風下で登山をしたことがあるけれど、あれ以上の爆風を感じたことはない。今では自分の中に「爆風メーター」が完成して、体感で危険度をランク分けできるようになった。たまに高速道路から遠くに安達太良山が見えると「登れなかったな~」とあの時のことを思い出す。
山は常に恐れと表裏一体。どの山が最高だった、最悪だった、怖かったかは、全て個人の主観であり天候次第とも言える。“山を舐めるな”とは、天候を舐めるな、自分の体力と技術と経験を過信するな、ということ。
これからもずっと、怖がってビビり倒して山に登りたい。
プロフィール
片岡メリヤス かたおか・めりやす|2011年から作家活動を開始。飾るだけではなく遊べて愛のあるぬいぐるみを制作する。また自ら脚本出演も行うオリジナルの人形劇を各地で上演しているほか、漫画、ドローイング、木工、粘土など様々な作品を手掛ける。近年は異ジャンルのアーティストとのコラボレーションや広告への作品提供など幅広く活動中。 text: Meriyasu Kataoka, edit: Fuya Uto
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