「叱られるから」ではなく主体的な学びへ 若手教育長が明かす「学びの転換」の現在地
■外発的な理由ではなく、内なる火燃やし続ける学び ──学びの転換をどう進めていますか。 島谷:加賀市では「BE THE PLAYER」というビジョンを掲げ、全校にポスターを貼って、教員や子どもなど全員の共通言語にしています。受け身ではなく、すべての人がプレーヤー・当事者として、自分事として学び、考え、動き、生み出し、そして社会を変えるという意味を込めました。学校は「こんな子どもを育てたい」と心底思えれば、それに基づいた創意工夫は大得意。その点は本当にプロだなと感心します。 高橋:ビジョンという旗を立てることは非常に重要ですよね。鎌倉市では子どもも含めてたくさんの人と対話して、ある先生から出てきた「炭火」というキーワードをビジョンに掲げようとしています。炭火は長くじわりと燃え続けます。「テストがあるから」「叱られるから」といった外発的な理由ではなく、自分の内なる火を燃やし続けて、生涯にわたって主体的に学び、変化し続けられる子どもを育てるという思いを込めています。先生に教えられる授業から転換し、子どもが自ら学びをつかみ取っていく「学習者中心の学び」を目指しています。これまでの教育界は忙しさのあまり、教育の目的やビジョンに立ち返らず、表出したトラブルへどう対処するかに追われ、疲弊してきました。鎌倉市では施策や手段で迷った場合には、北極星となる「炭火」「学習者中心の学び」に立ち戻り、対応しています。 (構成/教育ライター・佐藤智) ※AERA 2024年12月9日号より抜粋
佐藤智