羽生善治「永世七冠」どうスゴい? 次はタイトル100期と最年長記録に期待
将棋の羽生善治棋聖(47)が12月の「竜王戦」でタイトルを奪取し、史上初の「永世七冠」を達成。大きな話題となりました。今回の竜王奪取で通算獲得タイトル期数は99期となり、前人未到の「100期」も目前に迫っています。この偉業に、政府は囲碁の井山裕太七冠(28)とともに国民栄誉賞を授与することを検討していると伝えられています。 【写真】将棋界に世代交代の波? 「羽生世代」は曲がり角の時期なのか 元「週刊将棋」編集長の古作登氏(大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員)は「永世七冠は表現できないぐらいの大記録」と指摘。さらに「来春行われる名人戦も挑戦権争いを演じており、100期目は名人奪取というものを狙っているだろう。また今後は最年長タイトル獲得記録(56歳)の更新も期待される」と話しています。
「野球の三冠王を5年連続取る」ぐらいの偉業?
羽生棋聖は第30期竜王戦で渡辺明竜王に挑戦、4勝1敗でタイトルを奪取しました。今回の獲得で竜王通算7期目となり、永世竜王の資格を得ました。永世称号とは(別表参照)規定の回数以上のタイトルを獲得した棋士に与えられる称号のこと。羽生さんはこれまで永世称号が定められている7タイトル戦のうち、竜王を除く6タイトルで永世称号を得ており、今回の竜王奪取で七冠すべての永世資格を保持したことになります。 羽生竜王・棋聖以外の永世称号資格者は、現役では渡辺前竜王の2つ(永世竜王、永世棋王)が最高。過去では大山康晴十五世名人(故人)と、中原誠十六世名人が5つ保持していますが、七冠達成は初めての快挙です。「たとえば野球の三冠王を5年連続取るといった、ありえないことが起きたというぐらいの記録。今後現れるとも思えないぐらいだ。囲碁界では井山裕太七冠がそのペースにあるかもしれないが、羽生さんは30年近くタイトルを持ち続けており、尋常ではない」(古作氏)。将棋界では通算タイトル獲得が10期を超えている棋士は過去に8人しかおらず、通算99期も大山十五世名人の通算80期を大きく上回る記録です。それでも竜王戦後の記者会見で羽生さんは「将棋はまだまだ分からないことが多い」と語り、さらに高みを目指す姿勢を見せました。 羽生棋聖は今回の竜王戦の直前に王位戦、王座戦で若手の挑戦を受け、いずれもタイトルを奪われてしまい、竜王戦も獲得は容易ではないという見方も出ていました。しかし、竜王戦では最近流行している戦法の採用や意欲的な作戦を披露するなど積極的な指し回しが光り、渡辺竜王を圧倒しました。古作氏は「羽生さん自身がおっしゃっていたように、今回が永世竜王獲得の最後のチャンスという意識は本音だったと思う。ほかの棋戦で気を抜いたわけではないだろうが、竜王挑戦のチャンスが高まった時点から、今年最大の目標は竜王獲得だったのではないか。王手をかけた第5局でも新構想を見せたが、もつれる前に一気に決めるという意欲を感じた」とみています。 将棋界では最近、コンピューター将棋などの影響もあり、「雁木(がんぎ)」戦法という相当オールドスタイルな戦型が見直されており、羽生棋聖がこれを採用しました。新構想とは、「角換わり腰掛け銀」という戦型において従来なら「無理では?」と思われた局面で攻めに出たこと。これが見事に成功し、勝負を決したのです。