「私は腹が立つとマンガを描く」元原子力安全委員長が「マンガ」を描く理由
東京電力福島第一原発事故当時に内閣府の原子力安全委員会委員長を務めていた班目春樹(まだらめ・はるき)東大名誉教授が、原発事故対応時の経験を元にマンガを描いて公開していたことが分かり、話題を呼んでいる。ヘリから降りてくる菅直人元総理とみられる人物に「マッカーサー気取りか」、恣意的な番組編集をしようとするマスコミに「あんたたちのほうがずっとワルだ」など、マンガに登場する班目氏は驚くほど素直な感情を吐露し、奔放に発言する。元原子力安全委員長は、なぜ「マンガ」を書いたのだろうか?班目氏本人に聞いた。
学生がポカンとして見入る
班目氏がマンガを描いたのは、実は今回が初めてではない。マンガを描き始めたのは2003年か2004年ごろで、東大工学部で技術倫理の授業を受け持ったことがきっかけだという。 「技術倫理とは何かを教えるのに、マンガで解説することが便利だったこと、世の中で起きている技術倫理問題の解説にも適していたことから、マンガを描くようになりました。授業開始前からマンガをスクリーンに映しておくと、学生がポカンとして見入ります。学生の心をつかむのにも最適でした」 班目氏は授業で用いる技術倫理のマンガのほか、専門である原子力工学のマンガなども描き、自身のホームページ(HP)上に公開するように。原子力業界での不正行為を批判するマンガも描くなど、実に100作余りの4コママンガを掲載してきた。
「マンガという強い味方があったと気付いた」
今回話題となった福島第一原発事故後の経験を元にしたマンガは、班目氏が2012年9月に原子力安全委員会を退任した約半年後から少しずつ描きためていたものだという。「官邸などでの体験」「メディアとの攻防」「国会での体験」の3編で、計約80作の4コママンガ。2015年4月下旬にHPに掲載したといい、班目氏は「1年近くもたってから急に注目されて戸惑っている」という。 2010年4月に内閣府原子力安全委員会の委員長に就任した班目氏は、2011年3月の福島第一原発事故直後、菅直人元総理の原発視察に専門家として同行するなど、対応に追われた。事故直後はほぼ眠らない日々が続き「記憶がほとんど飛んでいる」というその壮絶な経験は、著書「証言班目春樹」にまとめられている。著書の出版や講演活動を続けているにもかかわらず、なぜ「マンガ」で表現する必要があったのか。班目氏はこう説明する。