「日本の小説への関心が高まっている」 「駐夫」がアメリカの書店でうれしいと思った瞬間とは
ニューヨークの書店員におすすめされる日本の小説
もちろん、最近の作品も注目を集めています。 アメリカ最大の書店であるバーンズ・アンド・ノーブルのユニオンスクエア店には、書店員による推薦書棚が1階のエスカレーター脇にあります。この店舗は、ニューヨークで最も売り場面積が広い書店で、私はよく通っています。 あるとき推薦書として、津村記久子さんの「この世にたやすい仕事はない」(「There's No Such Thing as an Easy Job」)と、川口俊和さんの「コーヒーが冷めないうちに」(「Before the Coffee Gets Cold」)が挙げられているのを見ました。 日系の紀伊国屋書店でなくとも、バーンズ・アンド・ノーブルなどのこちらの書店でも、日本の小説はかなりのスペースをとっています。 先日、お互いの国の本を紹介し合う仲の、ブラジル人のジャーナリストに「コーヒーが冷めないうちに」をすすめました。彼女はさっそく図書館のサイトで検索してみることに。すると、50冊の在庫があるもののすべて貸し出し中で、3か月近く待たなくてはいけないということでした。 日本の小説への関心が高まっているのは、ひとりの日本人としてもうれしく思います。大河ドラマ「光る君へ」の主人公・紫式部の「源氏物語」は、2019年にメトロポリタン美術館で特別展示が開かれました。あの時代の女性が書いた小説が今も読み継がれていることが、海外では驚きをもって受けとめられています。日本人のストーリーテリングの力は、脈々と受け継がれているのでしょう。 小説は翻訳者の力によるところが大きく、漫画のように絵によって直接的に表現できない難しさはありますが、作品自体の素晴らしいものは必ず伝わると思います。 これは小説に限らないのですが、日本の製品や作品がどれだけ素晴らしいのかは、こちらで生活するうえで日々身にしみて感じております。あとはそれをどう広めていくかということになるのではないでしょうか。 ちなみに、そのブラジル人のジャーナリストからはそのとき、「Lockdown:Inside Brazil's Most Dangerous Prison」という作品を紹介されました。囚人111名が死亡する虐殺事件が起こったカランジル刑務所で働いていた医師による、ノンフィクションです。
ユキ