入場渋滞ができるほどフランスで大人気!日本車イベント「Jap’n’ Car Festival 2024」
空気を切り裂く爆音。舞い上がる白煙。その後に残るゴムの焼ける匂い。今年もモンレリサーキットにドリフトが帰ってきた。そう、日本車といえばドリフトなのだ。Jap’n’ Car Festivalの開幕だ。モンレリサーキットを管理するUTACが自らオーガナイズするこのイベント。始まった頃は少数の参加者が集まる程度で、UTACのスタッフも日本人の僕にどういうイベントにしたら盛り上がるかをよく聞いてきたものだ。しかし、今年は違う。前回のヴィンテージリヴァイヴァル同様、ゲートから最寄りの高速道路まで渋滞ができるほどの人気に成長していた。今年の参加台数は1000台を超えている。 参加者の多くはヤングタイマーと呼ばれる80~90年代の日本車がメインで、現在新車で買える車まで集まっている。中には“中古車”の部類に入るゆるい参加車もいるが、日本車としてこういったイベントに参加してくれるのは嬉しい限りだ。発売当時は輸出されていなかったモデルも日本車の人気上昇によって、後に輸入されたモデルもあり、右ハンドルの車両もちらほら見かける。ショップのブースにはそういった日本車を専門に輸入する、その名も「RHD」というショップも。トヨタセンチュリーの昭和なシートカバーなども日本的で興味深いようで、スマホで写真を撮る人も多い。 コースに目をやると、“大阪府警”が煽られているじゃないか!大阪府警と書かれた赤色灯を積んだ、まさにパトカーがコースを走る。それが次々と抜かれていく様は、なんとなくスッとする思いで滑稽だ。コースから戻ってパドックにいる“なんちゃって大阪府警”のオーナーに話を聞きたかったが、タイミングが悪くオーナーに会うことができなかったのが残念だ。ベース車はマツダのユーノス100で、左ハンドルだ。 重量級のスポーツカーはGT-R系がやはり人気だ。フランスに輸出されなかったR32も参加している。中にはスカイライン R30も。ただし、それ以前のKPGCシリーズは見かけない。古いモデルといえばダットサン260Zが2台コースを走るくらい。日本車というと80年代以降が一般的に人気のようだ。 “藤原とうふ店(自家用)カラー”もまだまだ人気で、漫画同様にAE86ベースもいれば、現行の86にその塗装を施したものもいる。やはり、フランスでは日本の人気文化のひとつ、アニメや漫画の影響は大きい。アニメのTシャツやコスプレイヤーも会場にはたくさんいる。愛車をアニメなどのキャラクターでカラーリングを楽しむ人もちらほら見かける。人が集まるようになればショップのブースも増えてくる。日本車ブランドのブースはもちろん、ゲームのブースも。ドライビングシミュレーターのような本格的なブースから、フランスにはないゲーム機が並び、さながらゲーセンが出現したかのようだ。 イベントで盛り上がるのはやはりドリフト。観客席が一杯のモンレリサーキットはめずらしい。メインストレートに置かれたポールのまわりをコース一杯まで白煙を上げながら迫力のドリフトを見せる。スタッフの女性をポール代わりに置いてその周りをドリフトする。Z33はリアタイヤがバーストすると、その盛り上がりが頂点に達した。そして、助手席から降りてきた男性がその女性に指輪を差し出し、観客の前でプロポーズをするなんてハプニングもあった。 フランスでは日本食からアニメ、漫画の文化が浸透し、こうして車も多くの愛好者が増えてきている。フランスのお寿司の最後にはデザートとしてチョコレートを巻いた巻物が出るといった具合に、日本の文化がフランスの独自の文化として受け入れられている。これは車の世界でも同様で、どんどん盛り上がっていくのを感じることができたのだった。 写真・文:櫻井朋成 Photography and Words: Tomonari SAKURAI
櫻井 朋成