「高すぎる」シンガポール、インフレ低下も「GDP」は大幅増のスゴさ
インフレ減速で給料はどう変わる?
シンガポールの給与動向にも、インフレ減速の影響が見え隠れする。 専門サービス会社Aonの11月の調査レポートによると、東南アジア地域の2025年の昇給率は2024年を上回る見込みだが、シンガポールは域内で最も低い水準にとどまる可能性がある。 具体的な数字を見ていくと、シンガポールの昇給率は2023年が4.0%、2024年が4.2%、2025年は4.4%(予測値)と、緩やかな上昇にとどまる。これに対し、ベトナムは2025年に6.7%、インドネシアは6.3%、フィリピンは5.8%、マレーシアは5.0%など他国では軒並み高い昇給率が予想されている。 業界別に見ると、テクノロジーと製造業が最も高く、昇給率は5.8%に上る。小売業、コンサルティング、ビジネス・コミュニティサービス、ライフサイエンス・医療機器が5.4%でこれに続く。一方、エネルギー(4.9%)、金融サービス(4.8%)、運輸(4.1%)は、比較的低い昇給率となっている。 Aonはシンガポールの昇給率が他国より低い理由について、いくつかの要因を指摘する。まず、シンガポールは先進国市場であり、他の新興国と比べてインフレ率が低い傾向にあることが挙げられる。さらにGDPの成長率も域内の他国と比べて低水準であることが、昇給率の抑制につながっているという。
インフレ減速で東南アジア随一の生活コストはどうなる?
シンガポールのインフレが減速していることは、生活コスト比較サイトNumbeoのデータにも見て取ることができる。 家賃を含まない4人家族の月間生活費は、2024年5月末時点で5,477シンガポールドル(Sドル)だったが、12月には5,364Sドルに低下。ニューヨークと比べて21%低い水準となっている。 上記でも触れた不動産・賃貸市場でも若干の価格下落が観察される。中心部の1ベッドルームの家賃は、5月末時点で月額3,740Sドルだったが、12月には3,636Sドルとわずかだが下落した。ただし、3ベッドルームについては、5月の7,193Sドルから12月には7,401Sドルへと上昇している。 食品価格についても、一部で改善の兆しが見える。牛乳1リットルは5月末時点の3.81Sドルから12月には3.61Sドルへ下落。一方、パン500グラムは2.53Sドルから2.88Sドルへと若干上昇した。 外食でも興味深い価格推移が見られる。低価格帯のレストランにおける1食分の価格は、5月末と12月末では、ともに15ドルと変化はなかった。一方、中級レストランにおける2人分のコストは、5月末の95ドルから12月には90ドルへと下落している。
執筆:細谷 元、構成:ビジネス+IT編集部