「高すぎる」シンガポール、インフレ低下も「GDP」は大幅増のスゴさ
不動産賃貸市場、冷え込みの兆候、借り手優位の展開へ
インフレ率の低下は、加熱している不動産市場でも反映されつつある。 コロナ禍以降、過熱していたシンガポール賃貸市場では、新規供給の増加によりポストパンデミック需要を上回る状況が続いている。2025年の展望はまだ不透明だが、市場は借り手優位の方向に傾きつつあるという見方が有力となっている。 数字で見ると、この3年間で約60%も上昇した島内全域の賃貸指数は、直近4四半期で4%の下落を記録。この下落幅は、7~9月期に小幅な反発があったことで、やや抑制された形となった。特に中心部の高級コンドミニアムが、手の届きやすい価格帯への移行を先導しているという。 2025年の賃貸市場の動向は、新規物件の供給量と新規外国人居住者の数に左右される見込みだ。開発業者は今年に入り、供給に慎重な姿勢を見せていたが、状況は変化の兆しを見せている。10月の新規民間住宅販売戸数は738戸と、前月比84%増を記録。これは、2023年11月以来の高水準となる値だ。 ただし、この新規物件の供給量は、賃貸市場の需要に対して十分ではないとされる。理由の1つとして、公営住宅(政府が提供する比較的安価な集合住宅)から、より快適な民間のコンドミニアムへの住み替えを目指すシンガポール人が多いことが挙げられる。このような「アップグレード需要」は現在も強く、賃貸物件への需要を押し上げている状況だ。 一方で、賃貸物件の空室率は上昇傾向にある。シンガポールでは、物件のオーナーは入居者がいない場合でも、その物件に対して政府へ財産税を支払う必要がある。以前は空室物件に対する税金還付制度があったが、この制度は約10年前に廃止された。そのため、オーナーにとっては空室期間が長引くと経済的な負担が大きくなる仕組みとなっている。 最近の雇用動向も、賃貸市場に影響を与えている。第2四半期と第3四半期における非居住者雇用の増加は、主に建設、製造、警備サービス、造園分野におけるワークパーミット保持者によるもの。これらの労働者は主に寮や公営住宅に居住する傾向がある。Savills Researchは、企業のコスト削減に伴う人員削減により、より給与水準の高い就労パス保持者の減少が予想され、特に中~高級物件において新規外国人テナントの需要が低下する可能性を指摘している。 また、2025年11月までに実施される総選挙も市場に影響を与える要因となりそうだ。外国人の数を抑制する政策は、有権者にとって常に重要な問題となっており、さらなる規制強化により賃貸市場が影響を受ける可能性も高い。