“あの動物たち”は「式神」、「ポポポポ~ン」の生みの親が語る公共広告の裏側 #あれから私は
「♪まほうのことばで たのしいなかまが ポポポポ~ン」―――その歌詞を見るだけで、ついメロディーが頭に浮かぶ。あの日から数カ月、テレビでは繰り返しこのアニメーションCMが流れていた。当時の年齢や、どこで、どう過ごしていたのかによって、抱く印象は異なるかもしれない。あの「ポポポポ~ン」とはいったい、なんだったのか。10年経った今語られる、ACジャパン公共広告「あいさつの魔法。」制作者の思いとは。(取材・文:山野井春絵/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
東日本大震災の直後から、民間企業はCMを一斉に自粛した。テレビ・ラジオ各局でCM放送枠がすっぽりと空いたなか、代わりに繰り返し流されたのが、ACジャパンの公共広告だ。とりわけ「あいさつの魔法。」と題された子ども向けアニメーションCMは、「ポポポポ~ン」のフレーズもキャッチーで、多くの視聴者の記憶に残った。 ♪~ こんにちは(こんにちワン) ありがとう(ありがとウサギ) こんばんは(こんばんワニ) さようなら(さよなライオン) まほうのことばで たのしいなかまがポポポポ~ン おはよう(おはよウナギ) いただきます(いただきマウス) ナレーション>あいさつするたび ともだちふえるね ♪AC~
「あいさつの魔法。」はACジャパンの“全国キャンペーンCM”として、東急エージェンシーの北海道支社が2010年に制作した。小学校低学年くらいまでの子どもたちをターゲットに、「あいさつはたのしいこと、友達が増えるのは素敵なこと」というメッセージを伝えるためにつくられたものだった。それがたまたま、東日本大震災の時期と放映タイミングが重なったのだ。 単に心に残る過去の名作CMなら、いくつも思い浮かぶだろう。が、それらの放送時期を正確に答えるのは意外と難しい。しかし、この「ポポポポ~ン」は、一瞬にして人々の心を2011年の春に引き戻す。あの頃、テレビをつければ、被災地の状況や、放射性物質の影響を伝えるニュースばかり。暗い話題が続くなかで繰り返された無邪気で明るい「あいさつの魔法。」は、強いコントラストを描いて日本人の心に刻みつけられた。